研究課題/領域番号 |
21H01873
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
大竹 秀明 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (10727655)
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研究分担者 |
大関 崇 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究チーム長 (90425736)
フォンセカ ジョアン 東京大学, 生産技術研究所, 特任准教授 (00716582)
神山 徹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (40645876)
今井 正尭 京都産業大学, 理学部, 学振特別研究員 (70830389)
山口 順之 東京理科大学, 工学部電気工学科, 准教授 (50371224)
小野 耕介 気象庁気象研究所, 台風・災害気象研究部, 研究官 (70845677)
庭野 匡思 気象庁気象研究所, 気象予報研究部, 主任研究官 (10515026)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 太陽光システム / メガソーラーサイト / 積雪動態 / 発電予測 / 短時間先予測 / 1日先予測 / 燃料費最小化 / 発電機起動停止計画問題 |
研究実績の概要 |
本研究では、降雪現象による太陽光発電システム(以下、PV)上の積雪形成と融雪、落雪時の積雪挙動の実態の解明を主目的とする。発電システムという電気工作物上の積雪の振る舞いを地球物理学的手法に基づき、気象・雪氷・衛星計測などの多様なモニタリング手法から実態把握を目指す。それらの知見より、積雪、融解、落雪過程の解明とPV発電出力予測のためのモデル化と評価を行う。 北海道池田町の”ワインの里池田ソーラー発電所" (以下、池田サイト)に新たに自動気象観測装置とPV上の積雪をモニタリングする可視・赤外カメラ、360度観測可能なカメラの設置を行い、初期観測データの取得を行った。複数の積雪事例の観測に成功し、積雪量毎の落雪パターンの分析と発電実績データ、気象観測データによる統合的解析を進めた。 PV上の積雪モデリング技術に関しては、気象研究所で開発している積雪変質モデルSMAPを、国内のいかなる積雪環境においても一定の精度で計算出来るように高度化を行った。SMAPモデルを用いてPV上の積雪の時間発展を計算するための文献調査と対応すべきポイントの整理を行い、SMAPモデルを駆動するためのモデル前処理機能を整備した。 また、積雪を考慮した翌日を対象とする発電予測モデルの構築に関しては、過去の発電所の発電実績データ、気象庁観測データ、数値予報データを分析し、機械学習を用いた発電予測モデルの構築を進めた。 最後に、予測データの電力需給に関するインパクト評価を進めている。積雪による前日と当日間の予測誤差の影響が,積雪地域内外の供給支障の有無を含む電力需給バランス,および各地域間連系線に及ぼす影響を評価した。2050年を想定し,全国9エリアと地域間連系線を対象としてシミュレーションを行った結果,東京エリアにおいては,大規模積雪によるPVの予測誤差が電力系統に影響を与えることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
池田サイトにて可視カメラ・赤外カメラによる10分毎の観測と、360度カメラを用いたPV上の1分毎の積雪・落雪状況モニタリングを開始し、継続的なモニタリングを進めている。機器の設置検討、実際の設置作業にはCOVID-19感染拡大による研究分担者、協力機関の職員の安全確保のための対策を講じつつ実施した。また、近年の半導体不足による機器の調達・導入に時間を要し、観測機器の設置時期が予定より1ヵ月ほど遅れたものの、その後、いくつかの積雪イベントの観測に成功した。これにより、カメラ視野内に捉えられた複数のPVから同時多発的に落雪が発生する様子を捉えることに成功している。新たに設置した自動気象観測で取得されたデータ、及び発電実績データとの比較から、PV上の降雪―積雪―落雪メカニズムを調べる基礎データを取得できた。 一日先の積雪を考慮した発電予測モデルの構築に向けて、発電実績データと気象庁が公開している観測データ、発電所の位置に相当する数値予報データ(GPV-MSM)と統合するための各データ・セットを整備した。過去の事例を対象に機械学習モデルを構築し、予測誤差の分析を進めた。 また、国内の多様な積雪環境でも精度よく実行出来るように高度化した積雪変質モデルSMAPを、池田サイトの自動気象観測装置で駆動するための準備が整った。PV上積雪のシミュレーションを行うための必要なモデル改修の目途が立った。 電力需給モデルについて、積雪による前日と当日間の予測誤差の影響を評価する枠組みを構築できた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年2月から3月にかけて、いくつかの積雪イベントにおけるPV上のモニタリングデータが取得できていることから、今後、落雪発生の条件となるPV表面・裏面の温度や気象条件の変遷について調べると共に、蓄積された画像データから積雪/落雪イベント発生箇所の自動検出を行う深層学習モデルの開発を行う。次の冬季観測に向けて準リアルタイムイベント検知を目指す。機械学習を用いた一日先予測については、積雪による予測誤差を考慮した新しいモデルの提案を進める。 池田サイトの自動気象観測装置で観測した現地気象データを用いてPV対応版のSMAPモデルを駆動し、PV上の積雪の時間変化をシミュレートする。得られた計算結果をタイムラプス画像などと比較して、PV対応版SMAPモデルの現時点での性能を検討・評価する。合わせて、複数予報を用いた予測の不確実性について事例分析を進める。 電力需給モデルを用いた予測のインパクト評価において、積雪による前日と当日間の予測誤差の影響は,低頻度・巨大損失事象であり,分析意義のある想定シナリオの設定の検討を行う。 北海道電力株式会社総合研究所、ほくでんエコエナジー株式会社より冬季の電力需給情報やメガソーラーサイトにおける発電実績データを提供を受けている。これらの分析結果をもとに意見交換、電力需給上の運用上知見の共有を行うことで、オペレーション側の課題を反映させた積雪考慮型発電予測モデルへの構築を目指す。
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