• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実績報告書

輻射場と分子の強結合を利用した非断熱過程制御

研究課題

研究課題/領域番号 21H01886
研究機関京都大学

研究代表者

渡邊 一也  京都大学, 理学研究科, 教授 (30300718)

研究分担者 安池 智一  放送大学, 教養学部, 教授 (10419856)
奥山 弘  京都大学, 理学研究科, 准教授 (60312253)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード局在プラズモン / 強結合 / グラフェン / 銀 / インジウム
研究実績の概要

今年度は以下の点について成果を挙げた.
1)グラフェン上に担持した銀ナノ粒子の局在プラズモンとフラーレン分子の強結合観測
前年度までに確立した超高真空下の銀ナノ粒子作製と近紫外域プラズモン共鳴の観測に対して,種々の有機分子(テトラセン,フラーレン,ポルフィセン)の共吸着による光学応答の変化を調べた.走査トンネル顕微鏡による実空間観測により,銀粒子はグラフェンの欠陥サイトにトラップされて成長することがわかった.また,特にフラーレンを吸着させた場合のスペクトル変化について,新たに成分分解を試みることで,主に4つの成分にピーク分裂していることを見出した.フラーレンの3つの電子遷移と銀の局在プラズモンの結合を考慮したモデルハミルトニアンによる解析を行い,フラーレンの蒸着量の増加に伴う,ポラリトン状態のエネルギー変化を理論予測し,実験で得られたスペクトル変化を良く説明できることを示した.これらの成果を論文としてまとめ,現在英文学術誌に投稿中である.
2)インジウムナノ粒子のプラズモン応答と強結合
超高真空下で真空紫外領域の光学反射スペクトル計測を行うシステムを新たに構築し,これを用いてロジウム単結晶表面に作成した高品質グラフェン上にインジウムを蒸着し,形成されたナノ粒子による局在プラズモン応答を観測した.7eV付近に強い吸収を示す応答が得られ,時間依存密度汎関数法による計算と比較することで,インジウム粒子の局在プラズモン応答であると結論した.走査トンネル顕微鏡による観測で,インジウム粒子はグラフェンのモアレ構造が乱れたひずみの多い領域にトラップされていることがわかった.また,作製したインジウム粒子に,ベンゼンや水分子を共吸着させることによる光学応答の変化を観測し,分子と局在プラズモンの遷移双極子間の結合を考慮したモデル計算によりよく説明できることを示した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

近紫外領域および真空紫外領域において,超高真空下でプラズモン-分子の強結合を実現する新たな系を見出しており,順調に進行している。

今後の研究の推進方策

次年度は,今年度新たに見出した,グラフェンと強く結合する遷移金属原子を種として先に蒸着させ,その周囲に目的のインジウムや銀などを追加で吸着させることで,グラフェンのテラスに均一に分布したクラスターを作製する技術を確立する.また,新たに赤外振動分光測定を行うことで,超強結合条件下にある分子の基底状態のポテンシャル変調の検出を目指す.

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Proton Configuration in Water Chain on Pt(533)2022

    • 著者名/発表者名
      Nagatsuka Naoki、Shibata Noboru、Muratani Toya、Watanabe Kazuya
    • 雑誌名

      The Journal of Physical Chemistry Letters

      巻: 13 ページ: 7660~7666

    • DOI

      10.1021/acs.jpclett.2c01378

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 有機薄膜の超高速励起子スペクトル拡散2022

    • 著者名/発表者名
      渡邊一也
    • 雑誌名

      レーザー研究

      巻: 50 ページ: 11~16

    • 査読あり
  • [学会発表] Ultrafast Spectral Diffusion of Excitons in Molecular Thin Films2023

    • 著者名/発表者名
      Kazuya Watanabe
    • 学会等名
      Asian Conference on Ultrafast Phenomena
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] グラフェン上のC60/Ag共吸着系の光学応答2022

    • 著者名/発表者名
      吉田 龍矢,渡邊 一也,安池 智一
    • 学会等名
      第16回分子科学討論会
  • [学会発表] グラフェンによるインジウム超薄膜の構造制御と深紫外プラズモン応答2022

    • 著者名/発表者名
      長塚 直樹,渡邊 一也,安池 智一
    • 学会等名
      第16回分子科学討論会
  • [学会発表] Pt(533)面に吸着した水の水素原子曝露による反応2022

    • 著者名/発表者名
      木下 絵里加,土屋 維智彦,長塚 直樹,渡邊 一也
    • 学会等名
      第16回分子科学討論会
  • [学会発表] ヘテロダイン検出和周波発生振動分光によるPt(533)表面における水素と水の共吸着による反応2022

    • 著者名/発表者名
      木下 絵里加,土屋 維智彦,長塚 直樹,渡邊 一也
    • 学会等名
      表面界面スペクトロスコピー2022
  • [学会発表] ヘテロダイン和周波発生振動分光によるPt(553)表面における水分子の構造2022

    • 著者名/発表者名
      柴田昂,長塚直樹,渡邊一也
    • 学会等名
      表面界面スペクトロスコピー2022
  • [学会発表] Niシードによるグラフェン上インジウム超薄膜の構造制御と深紫外プラズモン応答の実現2022

    • 著者名/発表者名
      松口諒斗,長塚直樹,渡邊一也,安池智一
    • 学会等名
      表面界面スペクトロスコピー2022

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi