研究課題/領域番号 |
21H01894
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
森 寛敏 中央大学, 理工学部, 教授 (90501825)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 深共融溶媒 / 第一原理統計熱力学計算 / COSMO-RS法 / 弱い分子間相互作用 / CO2分離回収液 |
研究実績の概要 |
2021年度は、高精度 ab initio 量子化学計算に基づく分子間相互作用解析と統計熱力学計算のための、COSMO-RS法の拡張を行った。具体的には既存の COSMO-RS 法で活用されている密度汎関数理論ベースの表面電荷密度評価部分に、分散力の影響を取り込めるように補完を行った。その精度検証は、ガス吸収液の候補となり得る混合有機溶媒の過剰エンタルピーの実測結果と理論計算を突き合わせることで実施した。一般に、過剰エンタルピーは混合成分のモル分率に対して非線形に振る舞い、複雑な関数となる。拡張COSMO-RS法により、統計熱力学理論で期待される精度の範囲内で、十分に従来法を超える精度の改善を得ることができた。当該成果に基づき、現在論文投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究により、COSMO-RS法を拡張し、弱い分子間相互作用がある場合の第一原理統計熱力学計算の開発を完了した。理論の精度検証は、既報の実験値との比較で問題なく従来法を改善できていることを確認した。当該成果に基づく論文は、ChemAxivに投稿を終え、続いて査読つき論文への投稿するステータスへと移っている。現在、未知化合物からなる深共融溶媒のガス分離吸収能力を探索すべく、組成を系統的に振った二成分深共融溶媒の組み合わせ(億オーダー)について、拡張COSMO-RS計算を適用している最中である。 コロナ禍ではあるが、理論研究である強みを活かし、当初計画通りに成果を得ることができたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度までに、拡張COSMO-RS法の開発とその深共融溶媒への適用可能性検証は完了した。今後は、さらなる深共融溶媒のガス分離/吸収能を迅速に評価するための網羅的計算をスパコン環境を活用して実施する。拡張COSMO-RS法適用のボトルネックとなりうる部分は、各種熱力学物性の予測にあたり必要となる「表面電荷密度分布データ」蓄積のための高精度 ab initio 計算部分であるが、こちらについては計画通り、深共融溶媒が水素結合性の「混合物」であることを活用し、多数の深共融溶媒の組み合わせをなす構成成分分子の数は、多くても数千程度に抑えることができる。コンフォメーション解析を含めて表面電子状態データベースを確実に作成する。
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