研究実績の概要 |
地球温暖化の解決に向け、「合成の低コスト化」と「化学両論に制限されないガス吸収量」 が実現可能なCO2物理吸収液の開発が求められている。比較的CO2吸収量にも優れ、水素結合性の有機物を混合するだけで合成できる深共融溶媒(DES)は、その第一候補である。 昨年度までに、二成分DESについて網羅的な第一原理統計熱力学計算(COSMO-RS)の実施することにより、塩化コリン(ChCl)などのイオン性分子と3級アミノアルコールを水素結合性有機分子として含むDESが、湿潤条件においても、優れたCO2/CH4選択性を示すことを報告してきた。だが、その溶液機能を支配している溶液の構造や、ガス吸収速度に関わる拡散性については解明されていない。そこで研究採集年度は、より良いCO2/CH4選択性を持つDESの提案のため、DESの溶液構造と動的物性に関して詳細に理解することを目的とした研究を実施した。 二成分DESについて、混合溶液物性の再現力に優れるOPLS力場(Optimized Potential for Liquid Simulation)を適用した古典分子動力学シミュレーションを実施した。具体的には、3 級アミノアルコール 3-(Dimethylamino)-1-propanolとChClから成る DES(組成比 7:3) について、古典分子動力学(MD)計算を実施した。比較として、対応する 1,2 級アミノアルコールと単純アルコール系も調査した。その結果、3級アミノアルコールと 塩化コリンを含む系において、優れたCO2吸収性と吸収速度を併せ持つCO2/CH4分離吸収液の設計可能性が示された。機械学習と COSMO-RS 計算の連携から、DESを多成分化することで、CO2/CH4 選択性を向上できる可能性があることが分かった。
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