研究課題/領域番号 |
21H01896
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
二本柳 聡史 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (30443972)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 界面 / 非線形分光 / 超高速ダイナミクス / 電気化学 / 分子科学 |
研究実績の概要 |
初年度である21年度は装置開発に力点を置き研究を進めた。 まず赤外光の出力を1:4ビームスプリッターにより二つに分岐し、プローブ赤外光に加えて、ポンプ赤外光を得た。ポンプ赤外光の光路を新たに構築し時間分解その場HD-VSFG分光装置を構築した。また、本研究では必要に応じてバルク溶液のダイナミクスを測定する可能性があるため、ラマン測定に用いる近赤外光の光路も構築した。近赤外光の光源としては光パラメトリック増幅器のシグナル光またはアイドラー光の倍波が使用可能である。これらの光(プローブ赤外、ポンプ赤外、近赤外)および和周波発生の可視光として使用する狭帯域可視光を同時に入射可能な設計とした。また、これまでの経験を踏まえて、光路の要所にターゲットを配置したため調整し易い光学系となっている。一方、21年度中に使用しているCCD検出器に深刻な故障が発生し原産国において修理を行った。この修理には数か月を要したが、結果として冷却温度等の経年劣化も修理できたので購入時の性能を回復した。以上のように装置の技術的な問題は解決済みである。 構築した装置を用いてポンププローブ測定の試験を行った。試験測定としては空気中の金の非共鳴信号を用いた。ポンプ光とプローブ光の空間的・時間的重なりの最適化はポンプ光+プローブ光+800nmの3次SFGを最大化することで行った。以上のような露出界面における試験測定では良好な装置応答が確認された。また、定常スペクトル測定を用いて良好な測定系の探索を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の絶対的目標であった装置の構築については順調に進捗し、露出界面における試験測定で良好な性能が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度新たに構築した時間分解HD-VSFG分光装置を用いて電極界面の分光測定とダイナミクス測定を行う。 まずこれまでに定常スペクトルの観測に成功している白金電極/アセトニトリル溶液界面を対象として振動ダイナミクス測定の実験を行う。アセトニトリルのCH3バンドを赤外ポンプ光によって振動励起し、時間分解その場HD-VSFG測定を実現する。励起光と検出光であるSFG光の遅延時間の関数として時間分解スペクトルを測定し、振動励起状態の緩和過程を追跡可能であることを示す。 並行してアセトニトリル以外に検出可能な界面分子の探索を行う。まずいくつかの水溶液系の電解液について電気化学HD-VSFG分光測定を行う。そのほか二次電池の研究に広く用いられているグライム系電解液の測定も試す。これらの電解液に対して試験測定を行い、試験結果が最も良好なものについて電極電位の関数としてHD-VSFG測定を行い、電極界面における静的な溶媒和構造を明らかにする。
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