研究課題
本課題では、細孔内に内包した分子の挙動を明らかにし、内包分子の運動および相変化を利用した骨格の物性制御機構の確立を目指す。今年度は、引き続き Hofmann 型多孔性金属錯体 {Fe(pz)[Pt(CN)4]} を基軸化合物として、包接分子の運動や状態変化と骨格構造の磁性および発光特性との動的連動の達成を目指して、主に以下の (1)-(2) を推進した。(1)包接分子の挙動と磁気特性の相関の解明:引き続き、プロパンとプロピレン包接体の磁気挙動を比較検討した。プロパン包接体の「降温過程における4段階スピン転移」と「昇温過程における非平衡スピン状態」に対して、プロピレン包接体は「可逆的な二段階スピン転移」を示す。プロパンとプロピレンの吸着量はほぼ同量だが、固体NMRによりプロピレン分子の細孔内運動の抑制が示唆された。また、単結晶X線構造解析では完全にゲスト分子の構造は決定できなかったが、細孔内の残留電子密度の分布からもプロピレン分子のより強い束縛、ならびにスピン転移前後での大きな変化が確認された。以上より、ゲスト分子の構造自由度と細孔内での相互作用の違いが磁気挙動に大きく影響する事を実証した。(2)分子包接体内の包接分子の挙動と発光特性の相関:新規発光性一次元配位高分子 Cd(terpy-Br)[ReN(CN)4]を合成し、構造と発光の変化の連動機構を考察した。この化合物は一次元鎖が集積した二次元層構造を形成しており、アンモニアの圧力の増加に伴い、層間の拡張によるゲートオープン型吸着を示した。アンモニア雰囲気下in situ X線回折-発光スペクトル同時測定により、アンモニア吸脱着による構造変化に伴う発光波長変化も確認した。また、層間が大きく開く事でアンモニア吸着量は15.7mol/mol に達した。この値は多孔性配位高分子のアンモニア吸着量として最大であった。また、Re周りに空隙を導入した類縁体において、極めて低圧でアンモニアを検出できることを見出した。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 7件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (31件) 備考 (2件)
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