研究実績の概要 |
本研究課題では、蛍光半導体量子ドット(QD)における問題「毒性と性能」のトレードオフを解決し、当該ドットを活性層とする波長可変発光ダイオード(LED)を創製することを目標とする。この目標を達成するために、本年度は、QDの粒子径を±1.5Åレベルで制御可能な独自の湿式合成技術を基軸にコア/シェル界面制御技術を融合し、発光特性に優れ、環境毒性のないQDを合成することに取り組んだ。IV族半導体ではシリコン(Si)に着目した。蛍光量子収率(PLQY)の高いSiQDのみを分画する精製法を開発したことで、PLQY>50%かつ1000nm帯で効率良く発光するSiQDを合成、このQDを活性層に使用し、近赤外LEDの作製に成功した(ACS Appl. Nano Mater. 2021, 4, 11651)。次に、錫系ペロブスカイトではCsSnB(1-x)I(x)の結晶成長を制御する手法を開発し、赤-近赤外波長域で効率良く発光させる(PLQY>10%)ことに成功した(Nanoscale 2021, 13, 16726)。III-V族ではInPをコア結晶粒子に、ZnSをシェル結晶に用いて、シェル膜厚を制御するとコヒーレントコアシェル構造が形成され、コアとシェルの格子定数が等しくなる現象が起こることをInP系で初めて見いだし、70%-PLQYの深緑色蛍光体の開発に発展した(特願2021-142116、論文投稿中)。また、この研究の過程でGaとInを合金化したInGaP系では85%-PLQYを達成した。
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