研究課題/領域番号 |
21H01915
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山下 誠 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (10376486)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ホウ素 / アルミニウム / アニオン / 求核性 / 3重項 |
研究実績の概要 |
研究実績の概要 800文字 研究実施計画に記載した項目に従って以下の研究を行った。 (3-1) 高電子受容性の13族元素間単結合分子の電子状態制御と新反応:これまでに合成してきたアルキル置換Alアニオンを用いて、Al-B単結合を有するアルマボランの合成を行い、その性質を明らかとした。光電子物性を調査することにより、可視光吸収を示すこと、これがAl-B結合およびホウ素上の空軌道に由来することを明らかとしている。また、アルマボランと一酸化炭素およびジメチルスルホキシドの反応において、それぞれの反応剤がホウ素またはアルミニウムに配位して反応が開始すること、すなわち反応剤の種類によりホウ素とアルミニウムのどちらがルイス酸として作用するのかが異なることを解明、論文発表を行った。また、B-B単結合分子が金錯体と反応して得られるボリル金錯体のアルキンとの反応において、生成するボリルアルケニル金錯体のホウ素上の置換基とアルケニル炭素上の置換基が入れ替わるという特異な転位反応が進行することを見いだした。反応中間体の単離、構造解析に加えて、DFT計算による反応機構解析を行うことで、新しい反応機構を提案する論文を報告した。また、これまでにB-B単結合分子とアルキンの直接反応においてジボリルアルケンが生成することを見いだしているが、その詳細な反応機構(直接反応および塩基触媒による反応の2種類)と、反応速度に対する置換基効果に関しても明らかにして論文発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(3-1) 高電子受容性の13族元素間単結合分子の電子状態制御と新反応:炭素置換ジボランの合成を目指して、電子不足7員環を持つアズレンを置換基として導入する検討を行っている。6-ヨードアズレンをTurbo Grignard反応剤と反応させることで定量的に6-アズレニルGrignard反応剤が発生することを確認しており、現在はこれとホウ素反応剤の反応の解析を行っている。また、以下(3-2)へ記載したアミノ置換Alアニオンとハロアルマンの反応による非対称型ジアルマンの合成、英国エディンバラ大学のCowley博士が報告した低酸化数Al化学種アルミレンと上記のアミノ置換Alアニオンとの反応によるアニオン性の非対称Al=Al結合を持つ化学種の合成を検討している。 (3-2) 13族元素アニオンの特性解明と3重項状態の直接観測:本項目では目的とした炭素置換13族元素アニオンの合成そのものは達成していないが、アミノ置換Alアニオンを大量合成可能なことを見いだしている。このアミノ置換AlアニオンはScとの錯体合成が可能なことや酸塩化物との反応によりアシルAl化学種を与えることも見いだしており、合わせて詳細を詰めてから論文発表を目指す。一方、アルキル置換Alアニオンを合成する際にメカノケミストリー手法が有効であることを見いだしており、大量合成にも適用可能であるため、これにより合成したアルキル置換Alアニオンの固体物性の解明を進めている。特に固体27Al NMRによる低酸化数Al化学種の初めての直接観測やXPSによるAl原子の酸化数の決定を目指した検討を行っているため、早々の論文化を目指す。非環状の炭素置換Alアニオンの合成は前駆体となりうるかさ高いアルキル置換ハロアルマンの合成をいくつか達成しており、現在はその還元条件を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は研究計画に記載した項目のうち未達成なものを検討する。具体的には以下。 (3-1) 高電子受容性の13族元素間単結合分子の電子状態制御と新反応:これまでに合成したAl-B結合を有するアルマボランはホウ素上にアリール置換基を有しており、そのπ電子が分子の電子的性質に与える影響が大きかったため、アルキルボリル基を導入する検討を行う。一部前述したが、アズレン置換ジボランについては引き続き合成の検討を行う。また、Al-Al単結合を有するジアルマンを拡張して、Al-Al-Alと単結合でAl原子が3原子連なったトリアルマンの合成も検討を行う。 (3-2) 13族元素アニオンの特性解明と3重項状態の直接観測:これまでに合成したアルキル置換Alアニオンは大量合成が比較的困難だったため、異なるアルキル基を有するAlアニオンの大量合成法の確立を目指す。また、これまでとは異なり環状構造を持たないジアルキルハロアルマンを前駆体としたAlアニオンを発生、これを光励起することで3重項Alアニオンの発生を検討する。一般にハロボランを還元するとジボランが生成することが知られているが、上記で記載したメカノケミストリー手法ではその選択性が変わってBアニオンが形成する可能性があるため、アルキル置換Bアニオンを発生させる検討も合わせて進めることとする。
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