2023年度は研究実施計画に記載した項目に従って以下の研究を行った。 (3-1) 高電子受容性の13族元素間単結合分子の電子状態制御と新反応 新規に合成したテトラ(1-ナフチル)ジボランの溶液中での吸収・発光を既報のテトラ(o-トリル)ジボランと比較し、前者は後者に比べて大幅に短波長シフトした発光を示すことを明らかとした。これはホウ素上のアリール基の自由回転が立体障害により束縛されることで、構造緩和が起こる前に発光したことによると考えている。一方、独自に開発したAlアニオン反応剤を用いて、非対称型ジアルマンおよびトリアルマンの合成を行い、これらの構造解析・反応性解明・電気化学特性解明を行った。このトリアルマンは三配位Al原子が単結合で3原子以上連結した初めての分子であると言える。予備的にテトラアルマン誘導体も得ることができたが、次年度以降に継続して物性解明を行って論文発表を目指す予定としている。 (3-2) ジアミノAlアニオンの反応性解明 ジアミノAlアニオンの反応性解明の一環として、VおよびSmに対してAl原子を導入し、従来に存在しないV-Al結合およびSm-Al結合を持つ分子を合成した。前者は水素分子と速やかに反応すること、アルケンとの反応においてC-H結合Al化反応を起こすことも明らかとしており、さらにその素反応を詳細に解明することで、V触媒を用いたアルケンの触媒的C-H結合Al化反応へと展開した。また、後者はその磁性の解析からSm(II)化学種であることを明らかにすると共に、エチレンとの反応で瞬時にAlC2からなる三員環化合物を与え、これが速やかにAl2C4からなる六員環化合物へと異性化すること、この異性化が特徴的なアルキルリレー機構で進行することを明らかとした。
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