現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
羽ばたく分子FLAPが約100 pN(計算値)の力に応じてV字型から平面型へ構造変化して蛍光スペクトル変化を示す特徴を利用し、蛍光レシオ解析により高分子材料にかかるナノ応力集中を定量した。架橋高分子を一軸延伸したときに、ひずみ硬化領域から先では架橋点の方が主鎖よりもナノスケールの応力集中がおよそ2倍偏っているという知見が得られた。独自のForceプローブの開発から、普遍的な高分子レオロジーの新知見を得た一連の研究成果を論文およびプレスリリースで報告した(Nature Commun. 2022, 13, 303)。一方で、従来型FLAPが溶媒存在下では力学負荷のない状態でも自発的に励起状態平面化するため湿潤環境では利用できないという問題点を克服した。新たに分子設計・合成を行ったピレンイミド骨格をもつFLAPは、溶媒を含む高分子ゲル中でも力学応答をわずかに示すことを確認し、ゲルの作製・測定方法を改善することで、より力学応答を明確に観測できるようになった。具体的には、ゲルが容易に破断する引張試験ではなく比較的強い力を印加可能な圧縮試験を採用し、架橋ポリウレタンを膨潤させる有機溶媒の選択にも充分な検討を行なった。その結果、圧縮と除荷に対してFLAP導入ゲルは迅速かつ可逆に明確な蛍光応答を示し、その応力分布はピクセル毎に蛍光スペクトルが取得できるカメラによって、0-1 MPaの小さな応力範囲で蛍光イメージングでき、時空間的なナノ応力集中の追跡を可能にした(J. Am. Chem. Soc. 2022, 144, 2804)。本成果はアメリカ化学会(ACS)のWeekly Presspacに選出され、紹介動画とともにプレスリリースされた。また、FLAPを蛍光粘度プローブとして用い、ネマチック液晶の粘度変化の追跡にも成功した(Chem. Commun. 2022, 58, 2128)。
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