研究課題/領域番号 |
21H01926
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
久保田 浩司 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (60824828)
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研究分担者 |
SIDOROV PAVEL 北海道大学, 化学反応創成研究拠点, 准教授 (30867619)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | メカノケミストリー / ボールミル / クロスカップリング / 固体反応 / 不溶性化合物 |
研究実績の概要 |
本研究では、「基質が有機溶媒に溶けないため反応に使用できない」という100年近く続いた有機合成のボトルネックを解決する革新的固体有機合成を確立し、未踏のケミカルスペースを切り拓くことを目的とする。具体的には、我々が独自に見出した「高温ボールミル法」を駆使することで、様々な不溶性基質の固体反応を検討する。初年度にあたる本年度では、カルバゾールとアリールハライドの固体クロスカップリング反応(ChemSusChem 2022, 15, e202102132.)、固体ポリフッ素アリール化反応(ACS Catal. 2021, 11, 14803.)、および固体薗頭クロスカップリング反応の開発に成功した(Chem. Sci. 2022, 13, 430)。これらの反応は、幅広い固体基質に適用可能であり、特に難溶性化合物との反応も効率良く進行した。今後は、これらの反応を活用することで、溶液系では合成できない新しい機能性材料の合成へと展開していく。また、固体クロスカップリング反応における固体基質の反応性について調査し、融点が高いものほど反応性が下がる傾向を見出した(Synlett 2022, Just Accepted)。この研究を通して、基質の分子間相互作用を弱めるアプローチをとることで、溶けにくい分子の反応をコントロールできることがわかった。つまり、不溶性化合物の分子変換反応を今後開発していくうえで、重要な知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題の目的である不溶性化合物の自在分子変換の達成に向けて、その基盤となる反応開発に初年度で成功したため。(1) ChemSusChem 2022, 15, e202102132.(2) ACS Catal. 2021, 11, 14803.(3) Chem. Sci. 2022, 13, 430. (4) J. Am. Chem. Soc. 2021, 143, 6165.
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今後の研究の推進方策 |
初年度での成果に引き続き、この「高温ボールミル法」を駆使した反応開発を推し進め、固体宮浦-石山ホウ素化、固体C-Sカップリング、固体C-Oカップリングなどについても順次開発を検討していく。開発した反応を不溶性色素や顔料などに応用することで、発光材料や色素増感太陽電池用の電子・ホール輸送材料の開発などを行う。また、小分子の合成だけでなく、固体クロスカップリング重合反応の開発も検討を始める。クロスカップリング重合は、芳香族ポリマー類の合成において有用である。しかしながら、伸張していく分子の溶解性を向上させるためにモノマーに長いアルキル鎖を導入する必要があるなど、分子デザインに制限があった (Yokozawa et. al. J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 7236.)。本研究では、加熱ボールミル法による固体クロスカップリング重合および固体ホモカップリング重合を開発し、溶解性の観点から合成されたことのない未踏の芳香族ポリマー類の固相合成を検討する。
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