研究実績の概要 |
従来の有機合成では、有機溶媒を用いて溶液の状態で行うことが一般的である。しかし、この方法では溶媒に溶けない化合物は原理的に扱うことができない。本研究では、不溶性化合物は有機反応に用いることができない、という有機合成化学のボトルネックを解決する革新的固体有機合成を確立し、未踏のケミカルスペースを切り拓くことを目的とする。具体的には、ボールミルという粉砕機を用いるメカノケミカル法を活用することで、様々な不溶性基質の固体有機化学反応を検討する。研究期間の二年目にあたる本年度では、固体状態で進行するパラジウム触媒を用いたホウ素化反応(Beilstein J. Org. Chem. 2022, 18, 855.)、有機カルシウム試薬のメカノケミカル合成とクロスカップリングへの応用(Angew. Chem. Int. Ed. 2022, 61, e202207118.)、有機マンガン試薬のメカノケミカル合成と有機合成反応への応用(Chem. Sci. 2023, 14, 499.)、固体状態で進行する開環型フッ素化(Synlett 2023, Just Accepted.)、ポリマー添加による固体クロスカップリングの加速効果の発見(Faraday Discuss. 2023, 241, 104.)および固体クロスカップリング反応に特化したオリジナル触媒の開発に成功した(J. Am. Chem. Soc 2022, 13, 430.)。これらの反応は、幅広い固体基質に適用可能であり、特に難溶性化合物との反応も効率良く進行した。今後は、これらの反応を活用およびさらなる新反応を開発することで、溶液系では合成できない新しい機能性材料の合成へと展開していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題の目的である不溶性化合物の自在分子変換の達成に向けて、その基盤となる反応開発に成功したため。1. Beilstein J. Org. Chem. 2022, 18, 855.; 2. Angew. Chem. Int. Ed. 2022, 61, e202207118.; 3. Chem. Sci. 2023, 14, 499.; 4. Synlett 2023, Just Accepted.; 5.Faraday Discuss. 2023, 241, 104.; 6. J. Am. Chem. Soc 2022, 13, 430.)
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