研究実績の概要 |
従来の有機合成では、有機溶媒を用いて溶液の状態で行うことが一般的である。しかし、この方法では溶媒に溶けない化合物は原理的に扱うことができない。本研究では、不溶性化合物は有機反応に用いることができない、という有機合成化学のボトルネックを解決する革新的固体有機合成を確立し、未踏のケミカルスペースを切り拓くことを目的とする。具体的には、ボールミルという粉砕機を用いるメカノケミカル法を活用することで、様々な不溶性基質の固体有機化学反応を検討する。本研究期間では、主な研究成果として、固体状態で進行する遷移金属触媒を用いた高効率クロスカップリング反応(1. Beilstein J. Org. Chem. 2022, 18, 855.2.Angew. Chem. Int. Ed. 2023, 62, e202311531.3.RSC Adv. 2023, 13, 28652.)の開発に成功した。これらの反応は、幅広い固体基質に適用可能であり、特に難溶性化合物との反応も効率良く進行した。またこれらに加え、ポリマー添加による不溶性化合物の固体クロスカップリングの加速効果の発見(Faraday Discuss. 2023, 241, 104.)および固体クロスカップリング反応に特化したオリジナル触媒の開発にも成功した(J. Am. Chem. Soc 2023,145, 6823.)。これらの結果は、溶液系では合成できない新しい機能性材料の合成へと展開していく上で、基盤的な成果であり、今後のメカノケミカル合成のさらなる発展に資するものである。
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