研究課題/領域番号 |
21H01932
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
ウヤヌク ムハメット 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (20452188)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 合成化学 / 有機化学 / ハロゲン / 酸化反応 |
研究実績の概要 |
本研究ではハロゲンの酸化・還元能に着目し、高活性次亜ハロゲン酸塩触媒を創造することで低活性基質の酸化的カップリング反応の開発を目指している。本年度の研究成果については以下に記す。 (1)次亜ハロゲン酸塩酸化触媒:既に、我々は次亜ヨウ素酸塩触媒を用いる1-ナフトールのエナンチオ選択的酸化的脱芳香族化反応を開発している。今回は、ハロゲンの酸化還元電位に着目することで高活性次亜ハロゲン酸塩触媒の構築に成功し、基質適応範囲を低活性フェノールへと展開できた。 (2)キラル超原子価ヨウ素触媒:含フッ素化合物は数多くの医農薬品に含まれる重要な分子であり、その効率的構築法の開発が求められれている。我々は適切な共酸化剤とフッ素源を用いることで、in situで調製されるキラル超原子価ヨウ素触媒によるアレノールのエナンチオ選択的酸化的脱芳香族型フッ素化反応に初めて成功し、対応するフッ素化体を中程度の不斉収率で得ることに成功した。 (3)酸化的塩素化反応:ビシナルハロアミドは様々な生物活性物質を合成するための汎用的なビルディングブロックとして使用されている。我々は最近、塩化ナトリウムとoxoneからin situで塩素 (Cl2) や次亜塩素酸 (ClOH) のようなCl+種を調製し、これらを求電子的塩素化剤として用いるアレノール類の酸化的脱芳香族型塩素化反応を開発している。本手法では、高活性なCl+種が低濃度に抑えられるため、高い化学選択性が発現していると考えられる。今回、本手法を拡張し、ニトリル溶媒中NaClとoxoneをそれぞれ塩素源と酸化剤として用いる、様々なアルケンの酸化的Ritter型クロロアミド化反応を開発した。本反応は、触媒を一切用いず温和な条件下で円滑に進行し、グラムのスケールアップにも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)次亜ハロゲン酸塩酸化触媒システムの構築及び酸化的カップリング反応の開発:新たに高活性次亜臭素酸塩触媒システムを開発することで、これまでに酸化できなかった低活性フェノールの酸化的カップリング反応にも成功した。また、キラルカウンターカチオンを用いることでエナンチオ選択的次亜臭素酸塩触媒が可能であることも初めて見出した。 (2)キラル超原子価ヨウ素触媒:アレノールの酸化的脱芳香族型フッ素化反応において、初めて超原子価ヨウ素の触媒化に成功し、且つキラル触媒を用いることで中程度の不斉収率も達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究体制は、2022年度は2021年度と同じ人数を予定している。2022年度は、研究を維持し発展的に推進する。 (1)次亜ハロゲン酸塩酸化触媒:炭素-酸素カップリング以外のカップリング反応へ展開する。また、本触媒の活性化及び化学選択性のさらなる向上を目指し、触媒の対カチオン及び反応場の精密設計を行う。 (2)超原子価ヨウ素触媒:脱芳香族型フッ素化反応では不斉収率の向上を狙い触媒のさらなる精密設計を行う。また、エナンチオ選択的ビアリールカップリング反応の開発を始める。
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