研究課題/領域番号 |
21H01940
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
小笠原 正道 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (70301231)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | フェロセン / ホスフィン / 均一系触媒 / 遷移金属錯体 / 不斉合成反応 |
研究実績の概要 |
(1)面不斉メタロセンに基づく「不斉ホスフィンーオレフィン配位子」の開発 申請者は近年、オレフィン・メタセシス反応を応用して面不斉(π-アレーン)クロム錯体を不斉源とするホスフィン-オレフィン配位子1を報告している。配位子1はホスフィン部位とオレフィン部位で遷移金属にキレート配位し、様々な不斉反応において高いエナンチオ選択性を示す。配位子1と等電子構造を有するCp-マンガン配位子2 は、1よりも耐酸化性が高いため取り扱いが相対的に容易で、類似のキレート配位子として作用し99.9%eeを超える非常に高エナンチオ選択性を示す。 これらの知見をもとに、面不斉フェロセン骨格を有するホスフィンーオレフィン配位子3の合成と応用を検討した。配位子3は配位子2に類似した「架橋オレフィンとホスフィンの相対配置」を持つことから、遷移金属へキレート配位し不斉配位子として高いエナンチオ選択性を示すことが見出された。安定なフェロセン骨格による取り扱い易さの向上に加え、種々の置換基Rをフェロセン母核に導入することによる電子状態/立体環境の fine tuning が可能であることを示した。面不斉フェロセンを不斉源とする分子設計では、フェロセンの上下の立体環境に差を付けることが有効であることが知られており、配位子3においても、メチル基、ベンジル基、フェニル基などの嵩高い置換基を導入することにより、ロジウム触媒不斉アリール化反応においてより高いエナンチオ選択性を示すことを見出した。 (2)面不斉ビニルフェロセンの不斉メタセシス二量化の開発と新規不斉ホスフィン誘導体の合成 面不斉ビニルフェロセン類を非常に高いエナンチオ選択性で不斉メタセシス二量化する反応を見出した。ブロモビニルフェロセンから得られた二量化生成物を誘導化し、トランスキレート配位する面不斉フェロセニルホスフィン誘導体を合成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍による繰越があったが、繰越後の期間を含めると当初予定した計画を遂行することができた。また、設計/合成した不斉ホスフィン配位子が、予想通りの高い性能を示すことも確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)面不斉メタロセンに基づく「不斉ホスフィンーオレフィン配位子」の開発 初年度(繰越期間を含む)の研究において、「面不斉フェロセン骨格を有するホスフィンーオレフィン配位子3」の合成を達成した。配位子3が配位子2と同様に遷移金属へキレート配位し、ロジウム触媒不斉共役アリール化反応において高いエナンチオ選択性を示すことを見出した。次年度以降においては、これらの新規不斉配位子3を他の様々な遷移金属触媒不斉反応へ応用し、スコープを広げる検討を行う。また、必要に応じて不斉配位子3を他の研究者に提供し、共同研究を行う。 (2)面不斉ビニルフェロセンの不斉メタセシス二量化の開発と新規不斉ホスフィン誘導体の合成 面不斉ビニルフェロセン類の不斉メタセシス二量化により得られた生成物を誘導化し、トランスキレート配位する面不斉フェロセニルホスフィン誘導体を合成することに成功している。次年度以降においては、この特異な配位形式を有するキレートビスホスフィンの応用を試みる。まずはこのトランスキレート配位子のマクロスケールでの合成を行う。必要に応じて、不斉メタセシス反応によらない合成ルートの開発も検討する。トランスキレート配位子を十分な量で合成できたのちには、様々な遷移金属触媒不斉反応へ応用し、新規不斉反応の開発を検討する。
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