研究課題/領域番号 |
21H01942
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
野村 琴広 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (20304165)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 合成化学 / 有機金属化学 / 前周期遷移金属錯体触媒 / 触媒設計 / 精密重合 / 前周期遷移金属触媒 / オレフィンメタセシス |
研究実績の概要 |
本課題は従来触媒では合成できない新規ポリマーの創製や効率的なオレフィン重合・多量化を可能とする高性能分子触媒の創製や独自触媒の特徴を活かした新しい集積型高分子機能材料の創製や環境低負荷型の革新的合成法の開発に関する。2021年度の代表的な研究成果は以下の通りである。 環状オレフィンの開環メタセシス重合において、高いシス選択性でほぼ100%のシンジオ選択性を有するポリマーを合成可能とするN-ヘテロ環状カルベン(NHC)配位子を有するバナジウム-アルキリデン錯体の設計・創製に成功した。イミド配位子とフェノキシ配位子によるシス特異性の発現とNHC配位子による配位方向の制御により、目的の精密重合(2つの立体特異性の)制御に成功した。この種の重合に極めて高活性を発現するニオブ-アルキリデン錯体触媒の合成も達成し、関連錯体の合成とこの特徴を活かした材料合成に取り組んでいる。また、フェノキシ配位バナジウムアルキリデン触媒による官能基を有する各種ポリマーの合成も可能となってきた。 エチレンと天然に豊富に存在する非可食の植物油より得られる2置換オレフィンのリモネンやピネンとの共重合体(バイオベースポリオレフィン)や共役ジエンモノマーであるミルセンとの共重合体(バイオベースエラストマー)の合成を達成した。本課題で使用する非架橋のハーフチタノセン触媒のみが目的ポリマーの合成に有効で、申請計画に沿って、より高高性能触媒の創製にも取り組んでいる。特にミルセンとの共重合では、ジエン挿入後にエチレンの挿入と環化が速やかに起こる故に、今迄遷移金属触媒で成功例のないジエンとの反応をはじめて実現することを明らかにした。この共重合体は興味深いエラストマー特性を示した。また、エチレンと含量の異なる各種長鎖αオレフィンとの共重合体を合成し、従来ポリマーでは観察されない新しい結晶層が存在することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請者の独自触媒によるエチレンと非可食の植物油モノマーであるリモネンやピネン(2置換オレフィン)との共重合体の合成やリモネンとの共重合体の合成をはじめて達成した。特に後者の成果は、従来触媒では成功例の希少なオレフィンとジエンモノマーとのランダム共重合体の合成をはじめて達成し、得られるポリマーは興味深い物性を示す。また、広範に使用されるエチレンとαオレフィン共重合体における新しい結晶層の観察など、独自触媒の特徴を活かしたインパクトの大きな成果を期間内に達成しており、今後の展開を期待している。 また、ほぼ100%のシンジオタクト選択性で高いシス選択性を有する開環重合体を与える高性能バナジウム-アルキリデン触媒の創製や超高活性を発現するニオブ-アルキリデン触媒の創製など次年度以降に大きな成果を達成する独自触媒の合成にも所定の成果を得ており、課題が飛躍的に発展する可能性が高い。 以上の成果は、学術論文に加えて、Comprehensive Organometallic Chemistryでの第5族有機金属化学の執筆や関連書籍での章担当(次年度に掲載)、国際会議でのKeynote講演など国内外でも高い評価を得ており、今後の関連成果の進展が大いに期待される状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
今迄の成果を基盤に、研究計画に沿って課題をさらに発展させるつもりである。
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