研究実績の概要 |
本研究では、剛直な骨格をもつ大環状多核錯体を活用した高選択性・高活性反応を開拓することを目的としている。研究代表者らは以前に、NNO3座キレート配位部位papの環状6量体であるhexapap配位子の合成と、そのパラジウム6核錯体が4-tert-ブチルピリジンを結合することでねじれたC2対称の構造をとることを報告している。2021年度は、反応場としての構造と性質の解明のため、hexapapのパラジウム錯体による内孔配位子の捕捉能とそれに伴うコンフォメーション変化について更なる詳細な検討を行った。大環状配位子としては側鎖に嵩高いtert-オクチル基を導入し、積層を防いで複数の大環状分子が関与する望まない反応が起こらないようにした。内孔にアセトニトリルが配位したパラジウム6核錯体に対してトリフェニルホスフィンを6モル当量加えたところ、これが6分子内孔に配位した錯体の形成を支持する1H NMRスペクトルが得られた。6量体錯体は各パラジウムpapユニットが交互に上下に配向したS6対称の構造をとることが示唆された。次に、末端に配位性基をもつα,ω-二置換ペンタンの配位検討を行った。1,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタンを3モル当量加えて生成した錯体の31P NMRスペクトルでは、パラジウムに配位したリンのシグナルが2本観測された。また、1,5-ジアミノペンタンを3モル当量加えて生成した錯体の1H NMRスペクトルでは、パラジウムpap由来の各シグナルは等強度で2本に分裂して観測された。これらの結果から、hexapapのパラジウム6核錯体1分子につきα,ω-二置換ペンタンが隣接したPdを連結する様式で3分子配位した、C3対称の構造をもつ錯体の生成が支持された。
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