本研究では金属イオンと架橋性配位子から組み上がる様々な配位高分子(あるいは金属-勇気構造体)において、加熱によって結晶融解を示す物質群を対象とし、その融解メカニズムを解明することを目標として進めた。前年度までの成果により、配位結合や分子間力を司る金属-配位子の組み合わせや結晶構造の次元性(エンタルピー項)、および配位子の振動エントロピーや配座エントロピーが結晶融解に影響することを明らかとした。今年度はこれら知見を元にし、配位高分子の結晶融解現象を利用した機能発現および材料開発に注力した。Zn2+イオン、リン酸イオン、イミダゾールからなる配位高分子とプロトン伝導性固体酸としてよく知られるCsHSO4の両者はいずれも160~200℃において結晶融解を示すため、それぞれを異なる比で混合し、共融解処理を行ったところ、ある一定の比率において共晶現象を発見した。これは配位高分子(および金属-有機構造体)の分野において始めての確認である。この現象を利用し、比率の好適化を行った結果、幅広い温度領域において0.01 S/cmを超える高い無加湿プロトン伝導性を示すことを明らかにした。また配位高分子の融液状態に分子をドーピングし、冷却処理を行うことで、ガラス性触媒の作成を実施した。上述にあるZn2+イオン、リン酸イオン、イミダゾールからなる配位高分子の融液にCO2還元触媒として知られる鉄ポルフィリン分子を溶解、分散させ、冷却することによってガラス性触媒を調整した。ガラス化の際にドクターブレードを利用することで、均一かつ10μm以下の膜を調整でき、電極上に塗布できることを確認した。このガラス性分子触媒においてCO2光還元特性を確認すると、高いCO生成選択性が発現され、鉄ポルフィリン触媒が均一系で示す特性が反映された触媒であることを確認した。以上のように、配位高分子の融解現象に基づくドーピングやブレンディングによる機能発現を行った。
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