研究実績の概要 |
本年度は、高活性な分子性酸素発生触媒(WOC)修飾グラフィティックカーボンナイトライド(g-C3N4)光触媒を開発することを目的とした。具体的には、比較的小さな過電圧で酸素生成触媒反応を駆動する単核コバルト中心を有するコバルトポリオキソメタレート(CoPOM3-)、並びにコバルトテトラフェニルポルフィリン(CoTPP)を物理修飾したg-C3N4光触媒を作製し、犠牲酸化剤(Ag+)の共存下における触媒活性の評価を行った。含侵法によってCoPOM3- ((THA)3CoPOM, THA+ = tetraheptylammonium)、並びにCoTPPを物理修飾したg-C3N4光触媒(g-C3N4/(THA)3CoPOM, g-C3N4/CoTPP)を作製した。次に、可視光照射下における触媒活性の評価を行ったところ、g-C3N4/(THA)3CoPOMはg-C3N4/CoTPPよりも高い触媒活性を示すことが確認された。一方、g-C3N4/(THA)3CoPOMの触媒活性に対する(THA)3CoPOMの修飾量依存性を調査したところ、修飾量の増加に伴って酸素生成の初速度が向上し、修飾量が10μmol/gを超えると初速度はほぼ一定となった。以上の結果より、修飾量が10μmol/gよりも少ない場合は酸素生成触媒反応、あるいはCoPOM3-からg-C3N4への電子移動が律速過程であり、修飾量が10μmol/gよりも多くなるとg-C3N4表面へのホールの移動が律速過程となっていることが明らかとなった。修飾量が1μmol/gの場合にTON (57.8)、およびTOF (15.8 h-1)は最大となり、いずれも既存の分子性WOC修飾C3N4光触媒の中で最も高い値であることが明らかとなった。
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