研究課題/領域番号 |
21H01954
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
藤枝 伸宇 大阪公立大学, 大学院農学研究科, 教授 (00452318)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 人工金属酵素 / タンパク質配位子 / 立体分岐型合成 / 不斉反応 / 生体触媒 |
研究実績の概要 |
本研究では、活性中心が柔軟に変化する人為酵素の創製を目指し、第一配位圏や第二配位圏を多様化したタンパク質金属錯体を作製後、効率の高い錯体触媒をスクリーニングしていく。最終的に、活性中心の柔軟な動的変化と酵素活性の関係性に関する知見を明らかにすることを目標とする。具体的には、タンパク質金属錯体のマイケル付加反応などへの活性を観測しながら、触媒活性との相関関係を評価するとともに人為酵素の設計方法を構築する。構造解析や種々分光法で観測の可能な金属中心の位置転位を動的変化の一例として活性との関係に着目し、タンパク質金属錯体を詳細に機能解析していく。本年度では金属結合サイトを様々な配位構造や配位数に変化させ、金属との様々な結合様式によって、位置転位を含めた特異な反応場を構築する。これに加えて、変異導入位置がタンパク質骨格に対して固定されているため、空いた配位座(活性点)の配向も多様化される。つまり、金属中心への基質のアクセス方向も同時に変化させることが可能になると考えられる。昨年度では、第1段階のライブラリーを構築した。その結果、2-His-1-Gluをもつ変異体が高い立体選択性を示した。そこで本年度はこの変異体を中心に、第二配位圏への変異導入を行い、反応の選択性や効率をスクリーニングした。その結果、トリプトファンを導入した変異体において新たな水素結合ネットワークの導入に成功し、さらなる選択性や収率の向上が見られた。また、X線結晶構造において銅中心の位置遷移を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では人為酵素構築のため、金属結合サイトを様々な配位構造や配位数に変化させ、金属との様々な結合様式によって、位置転位を含めた特異な反応場を構築する。金属結合サイトにおける様々な配位構造や配位数の変化により、その金属結合様式に加えて、変異導入位置がタンパク質骨格に対して固定されているため、空いた配位座の基質配向も多様化される。つまり、金属中心への基質のアクセス方向も同時に変化させることが可能になると考えられる。昨年度では、第1段階のライブラリーを構築した。特に、配位性アミノ酸残基(グルタミン酸、アスパラギン酸)導入による多様化を行った。結果、H58E変異が最も良い立体選択性を誘導することがわかった。そこで本年度ではこの変異体に更に変異導入したものの内、F104W変異を導入した変異体でさらなる立体選択性を示すことを明らかにした。さらに、これらの変異体をJeffamineを沈殿剤としてハンギングドロップ法にて結晶化を行った。得られた結晶をX線結晶構造解析したところ、昨年度よりもさらに高分解能でデータ取得に成功し、その結果、トリプトファン導入により新たな水素結合ネットワークの形成に成功した他、結合した銅の電子密度は明らかに異方性がみられ、銅中心が1オングストローム前後の位置遷移を起こしている可能性が明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
来年度では、これら作製した変異体を、更に詳細に特性評価するため得られた錯体をX線結晶構造解析し、金属の占有率を決定しながら、ESRやラマン分光法でその占有率の裏付けを行っていく。また、金属結合サイトを様々な配位構造や配位数に変化させたライブラリーにおいて、本年度注目した以外に、高い選択性や反応性を示したものについても同様の特性評価を行ない、反応性と金属中心の特性の関係性を明らかにする。進捗が良好であれば、配位性アミノ酸残基であるメチオニンやシステインを含む変異体も作成し、さらなる多様化を行う。様々な金属と錯体を形成させ、マイケル付加反応だけでなくDiels-Alder反応を用いて、立体選択性を示しながら効率よく触媒するタンパク質金属錯体をスクリーニングしていく予定である。
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