研究実績の概要 |
1)ヒト間葉系幹細胞hMSCを骨細胞および軟骨細胞への分化誘導する培養条件で、SICM測定を実施し、高さ情報や細胞表面の粗さにより分化状態の定量的解析に成功した。骨細胞および軟骨細胞への分化過程を分子マーカー(アルカリホスファターゼおよびアルシアンブルー染色)により評価した。骨分化過程のSICMの結果をもとに、細胞高さの分布(ヒストグラム)や細胞の形態により分化状態を評価した。hMSCのうち増殖速度活性の高い細胞集団 (REC, 高純度ヒト間葉系幹細胞) の骨分化過程で培養1, 2日目の初期過程で、骨分化培地の細胞高さが未分化維持細胞と較べて有意に低い結果が得られた。このようにSICMでは細胞高さという形状特徴から培養養初期段階での分化能評価が可能となる利点が示された。一方培養中期以降 (5, 8, 14日目) において、RECと通常のhMSCともに、骨分化培地で培養した細胞の高さが未分化維持培地で培養した場合に比べてて有意に低い結果が得られた。しかし、培養中期以降の細胞高さの差は、未分化維持培養細胞において細胞が密になりすぎ高さが増加したため生じた可能性がある。特に培養8日目以降では、細胞高さ情報は細胞密度に影響を与えるため、SICMによる骨芽細胞分化能の評価には限界があることが分かった。本実験では固定化細胞を用いたが、今後は生細胞を対象とした測定を検討している。2)血管モデル培養系および線維芽細胞/血管内皮細胞/がん細胞共培養系における薬剤感受性試験、薬剤応答を電気化学的評価および形状情報、画像解析など複合的な評価を検討した。3)探針走査が不要な広視野電気化学イメージングデバイスや新原理に基づくイムノアッセイ系を開発した。
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