研究実績の概要 |
1)昨年度に引き続き、ヒト間葉系幹細胞hMSCを骨細胞および軟骨細胞へ分化誘導する培養条件で、SICM測定を実施し、高さ情報や細胞表面の粗さにより分化状態の定量的解析に成功した。細胞表面の粗さ分析ではSICM計測で得られるラフネス(Ra)に着目し、軟骨分化培養過程7, 14, 21 日目dにおいて単調にRaが減少していく様子を観測した(望月紳司ら2023年電気化学会秋季大会)。SICMによる組織モデルの表面粗さ評価法をヒト結腸癌由来細胞株の腸管3D培養系デバイスに応用した。2)血管モデル培養系における細胞塊の血管新生能評価デバイスの研究をhMSC細胞塊評価系に応用した。hMSC細胞塊を骨分化培地により培養し、走査型電気化学顕微鏡SECMにより呼吸活性OCRを評価した。骨分化培地条件培養7日目の細胞塊(OM)は増殖培地条件の細胞塊(GM)に比べOCRが著しく低下した。この結果は培養15日目においても同じ傾向を示した。免疫染色およびmRNA発現の評価から、OMでは骨分化初期マーカーであるアルカリホスファターゼの発現が、GMでは培養7日目までは未分化マーカーstro-1の発現が顕著であった。また、血管モデル培養系デバイスにより、培養7日目ではGMで血管新生能が著しく高いのに対し、培養15日目ではOMとGMともに血管新生能の低下が観測された。以上の結果より、血管新生能を高活性に保つために、未分化状態のhMSCが細胞塊に含まれていることが重要であると示唆された(A. Konno et al., Tohoku University GP-Chem Chemistry Summer School 2023)。3)探針走査が不要な広視野電気化学イメージングデバイスとして、closed bipolar電極アレイ型デバイスに還元型電気化学発光を組込む方式や、酸素・活性酸素濃度の電気化学発光マッピングを検討した。
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