本研究は、泡膜の安定性といった機能の基盤となる物性(弾性・粘性)を、ミクロな分子期限(構造・動態)に立ち返って、明らかにすることを目的とする。本研究では、顕微鏡の観測部に、泡膜一枚を張ることのできるセウドコセルを設置し、湿度を制御しながら、泡膜の生成から破裂までの全過程をリアルタイム追跡できる計測装置の開発に成功した。 具体的には、泡膜の下部から、白色光干渉光で、泡膜の厚みやその空間変化を2次元画像でリアルタイム追跡しつつ、泡膜上面から、ヘテロダイン光干渉法を用いて、光散乱光の強度揺らぎを泡膜の生成から破裂までの全過程をデーターロガーで記録する。 この装置の開発により、泡膜が厚い、すなわち干渉膜のときは、滑らかに厚みが減少していくが、泡膜がサブミクロン以下になり黒膜化すると、階段的かつ空間的に不均一になり、最後、均一な黒膜状態をしばらく保って割れる状況が、つぶさに二次元観察することができた。 この状態において、レーザー光干渉の実時間応答を計測し、泡膜の膜厚の減少速度、黒膜化後の光散乱強度の揺らぎの時間変化から、泡膜の粘弾性物性を計測することに成功した。結果として、同じく黒膜の寿命(安定性)が増すにしても、添加剤の種類の違いによって、安定化要因(排水速度の減少、泡膜自体の剛直性、泡膜自体のねばりっこさ)が異なり、添加剤の種類による、多次元的な、泡膜の物性評価・分析方法を提案することに成功した。
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