研究課題/領域番号 |
21H01971
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
柴 弘太 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主任研究員 (20638126)
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研究分担者 |
田村 亮 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主任研究員 (20636998)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 鼻腔 / 粘性係数 / 分子量 / 流体力学 / 構造力学 / 流体―構造相互作用 / 気体 / 流体 |
研究実績の概要 |
本研究では、我々の鼻の内部構造(鼻腔)とガス流れの相関を詳細に検討することで、人工嗅覚の実現に資する最適センサの開発指針を得る。この目的に向け、申請者独自のガス分子量測定法(大気環境、リアルタイム、非破壊)および同特長のガス粘性測定法(2019年採択の国際共同研究強化Bで創出済み)を用いる。これら手法はガス流れに伴う構造体の機械的変形を測定するため、任意のガスから異なる情報を得られる。加えて、その測定流量範囲(mL/min~L/min)、高速応答性(< 1 sec)から、呼吸レベルの流体計測に適している。鼻腔の各要素を模した流路内でこれら測定を行うことで、生物嗅覚に見られるニオイの高感度検出・高精度識別の理由を明らかにする。上記の相関には非線形性が想定されるため、有限要素解析と機械学習を組み合わせたガス流れ・センサ応答の自動最適化プロセスを組み込むことで、研究を加速する。 昨年度は上記目的に向け、呼吸程度の流量範囲で空気を供給しながら計測可能な測定系の構築に取り組んだ。3Dプリンタやポリジメチルシロキサンを利用した流路設計を、条件を細かく変えながら繰り返し試行することで、当該目的に利用可能な流路を得る目処がついている。これら流路内部へのひずみゲージの固定についても検討を進め、気流存在下で安定して出力を得る方法についても概ね確立することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2021年度は、計画していた研究内容を実施するとともに、耳鼻咽喉科の専門家と意見交換する機会を設けるなど、本研究の目的達成に向けて積極的な情報収集を行った。その結果、本研究は嗅覚異常の患者を治療する上でも重要な指針を得ることにつながることが分かり、「嗅覚センサ実現のための最適な流路設計」という当初目的を超えた医学的・社会的意義をも有することを理解するに至った。特に近年はコロナウイルス感染の一症状として嗅覚障害がきわめて身近なものとなっており、本研究はスピード感をもって取り組むべき最重要な課題であるとの認識を新たにした。年度中に実施予定であった測定系まわりの基礎検討は概ね完了していることも踏まえると、本研究はきわめて順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、鼻腔モデルを使用した検討を計画している。上述の耳鼻咽喉科の専門家との意見交換の中で、条件として優先的に検討すべき具体的な項目が見えてきており、手術練習用などに使用されている実寸大の鼻腔モデル(実在するヒトの鼻をもとに作製)が入手可能であることも分かった。さらに、これまで行われてきた鼻腔内の流体シミュレーションなどは基本的に鼻孔から空気を流入させる「陽圧型」を前提としていたが、実際の呼吸は喉のほうに吸い込んでいく「陰圧型」であることも一つの重要な点であろうとの知見も共有している。そのため、これを模倣し再現する形の測定系を構築し、実際の鼻腔内で実際の呼吸を再現しながら、センサ応答を最適化していく要素を網羅的に検討していく予定である。
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