研究課題/領域番号 |
21H01975
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山本 旭 京都大学, 人間・環境学研究科, 助教 (30769443)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 光熱変換 / 温度計測 / 二酸化炭素変換 / 金属ナノ粒子触媒 / 太陽光エネルギー / メタン / 改質反応 / 温度勾配 |
研究実績の概要 |
本研究では太陽光エネルギーを利用し二酸化炭素を有用化合物へ変換する触媒反応系の開発を目的として,二酸化炭素とメタンから化学原料として有用な合成ガス(水素と一酸化炭素の混合ガス)へと変換するドライリフォーミング反応に関する研究を中心として実施した.初年度のなる2021年度では,Xeランプを集光することにより触媒リアクターを光加熱した条件で反応を実施し,生成物である水素と一酸化炭素が生成することを確認した.また,典型的な含浸法で調製したニッケル触媒は反応条件下で炭素析出により急速に失活することが確認されたため,触媒の耐久性の向上を目指して触媒活性点となるニッケルナノ粒子の微粒化に取り組んだ.種々の検討の結果,ニッケルフィロシリケートの熱分解を用いた手法によりニッケルナノ粒子の微粒化に成功し,光照射下におけるドライリフォーミング反応において触媒の活性および安定性を向上させることに成功した. 触媒部の温度測定に関しては,放射温度計,X線分光法,蛍光発光を用いた手法を検討した.中でも大型放射光施設SPring-8で実施したX線分光法を用いた手法により,光照射下の触媒反応中で金属ナノ粒子の温度を計測することに成功した.また,本実験では波長分散としたX線を利用しており,これにより高い時間分解能での高速測定が実施できた.光照射により金属ナノ粒子の温度は最大で1秒間に60℃以上の温度で上昇していることが分かり,さらに今回の定常的な光照射下での触媒反応条件では400℃以上の温度に達していることが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初に予定した計画通りXeランプの光を集光した条件下で他の熱源を用いずにドライリフォーミング反応が進行することを確認し,ニッケル系の触媒材料の性能及び耐久性を向上させることに成功した.またX線分光法による温度計測法を確立できた.一方で技術的な問題点から我々が用いた手法では二次元の内部温度を計測することは困難であることがわかり,その点については次年度以降の検討することとした.また実験室系では適切な検出波長の放射温度計を使用することにより,触媒部の温度に関する議論をすることが可能であることが確認できたため,材料開発の上で温度計測に関する予定の遅れの影響は小さいと判断した.以上より,研究計画は概ね順調に進んでいると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今年度にはX線分光法を用いた温度計測法を光照射下の反応系に適用することに成功したが,技術的な問題で二次元の内部温度の計測は困難であることが分かった.この点については,別の手法を次年度以降に検討することを計画した.一方で,実験室系では適切な検出波長の放射温度計を使用することにより触媒部の温度に関する議論をすることが可能であることが確認できたため,上記の問題により研究の全体が遅れることはないと判断した.次年度以降については,X線を用いた手法の開発を継続しながら,更なる高性能触媒の開発を実施する予定である.
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