本研究では太陽光エネルギーを利用し二酸化炭素を有用化合物へ変換する触媒反応系の開発を目的として,二酸化炭素とメタンから化成品原料として有用な合成ガス(水素と一酸化炭素)を得るメタンドライリフォーミング反応に関する研究を中心として扱っている.3年目となる2023年度では,Xeランプからの可視・近赤外光を集光して得られる高強度光による加熱作用を利用した二酸化炭素の改質反応の高性能化に取り組んだ.シリカ担体上にシリカ被覆ニッケルナノ粒子を形成させ,それを触媒として利用した光照射下でのメタンドライリフォーミング反応を検討したところ,ニッケル表面のシリカ被覆により触媒の安定性が向上することが確認された.さらにこれまでに確立してきた温度計測技術を基盤としてニッケル担持量が触媒活性に与える影響について詳細な検討を実施したところ,触媒活性点数,光吸収特性,熱伝導率等が光照射下の温度と触媒活性に影響を与えると解釈することにより,光照射下での一連の温度および触媒活性が整理可能であることを示し,原著論文として報告した.また,初年度および次年度で開発したニッケルとコバルトの合金ナノ粒子触媒系では,調製パラメータの最適化を実施し少量のコバルト添加(ニッケルに対して0.5mol%程度)で反応中の炭素析出による触媒失活が大幅に抑制されることが分かった.また,放射温度計を用いて光照射下の触媒リアクターの表面温度の測定も実施し,リアクター内で形成される温度勾配が触媒反応の性能に大きく影響することを明らかとした.
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