水素結合性有機溶媒と非極性溶媒との混合有機溶媒中において、温度変化に伴う相転移を側鎖に水酸基を有するビニル系ポリマー(ポリ(4-ビニルフェノール)、 ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(HEMA)、ポリ(4-ヒドロキシフェニルポリアセチレン)など)を用いて系統的に探索した結果、ほとんどの高分子で下限臨界共溶温度(LCST)型あるいは上限臨界共溶温度温度(UCST)のコイル・グロビュール転移を示し、水素結合の切断による脱溶媒和に基づく分子設計が高い一般性を有することを立証した。さらに、ポリマー溶液の相図の解析から、UCST型及びLCST型の温度応答性と溶媒分子と高分子の官能基間の相互作用との関係が明らかになり、温度応答性発現の機構と設計に対して、基本的な考え方を示すことができた。 さらに、これらの非水中でのLCST型相転移分子の分子設計と両親媒性高分子における水中での分子設計との接続を行い、水中のLCST型温度応答性を示す新奇な高分子として、N-メチル化ナイロンの開発に成功した。網羅的な探索によって、第3級アミド1つあたりのユニット構造が分子式C6H11NOであることの重要性が示された。これは既知のLCST型温度応答性を示す高分子と同じであった。水中におけるLCST型温度応答性と高分子構造との精密な構造活性相関を明らかにすべく、第3級アミド1つあたりのユニット構造が分子式C6H11NOである高分子の構造異性体を全て列挙するプログラムを作成し、387種の構造異性体が存在しうることを明らかにし、そのうちの10%のみが既に報告があり、3%について温度応答性が調べられているに過ぎないことを明らかにした。構造活性相関用の高分子のデータベースの構築を並行して行い、機械学習の手法から選んだいくつかの新規な高分子の合成に成功し、その温度応答性を決定することができた。
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