研究課題/領域番号 |
21H01983
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
関 隆広 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (40163084)
|
研究分担者 |
原 光生 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (10631971)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 自由界面 / アゾベンゼン / RAFT重合 / 液晶高分子薄膜 |
研究実績の概要 |
近年、刺激応答機能を組み込んだ重合法の開拓が進んでいる。光照射で重合の進行のオン/オフを制御できる重合法もその一つで、米国や豪州 からの報告をきっかけとして、ここ数年世界中で急激に研究が進展している。一方、研究代表者は液晶分子や液晶高分子薄膜の光配向法をその 発見当初から研究に携わり、多くの経験と知見を蓄積している。本研究では、近年発展した光制御重合と光配向の手法と融合し、光照射にて重合を制御しながら同時に光配向を施す、これまでにない光応答重合システムの創出を目指す。具体的には、アゾベンゼンを有するRAFT剤(高分子および低分子)を合成し、バルク、基板表面と空気界面から液晶性モノマーを薄膜中にて、光電子移動を組み込んだオン/オフ制御と光配向 制御を試みることを目的として研究を開始した。 令和3年度では、基板にモノマーを挟むことなく、片面を空気へ露出させた状況で安定した薄膜を得て、市販のRAFT剤にフッ素部位を導入 し、このRAFT剤をモノマー分子に少量混合させて、表面偏析させ、イリジウム錯体の光触媒の存在下、重合させる条件を種々検討した。その結果、適切な膜厚とRAFT剤の量の条件を見出し、空気側から光で触媒を介して空気側から重合を進行させることに成功した。しかし、現段階では まだ光配向を同時に行うところまで至っておらず、来年度以降の課題である。また、こうした界面を介した重合系と関連して、基板表面上でのアゾベンゼンポリマー薄膜ネマチック性のシアノビフェニル液晶分子が接触することで、 その界面にて各々の物質では現れない高度なスメクチック構造が形成されることを、独自に工夫し開発した液晶セルでの斜入射X線測定で見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度に、空気界面へ偏析させたRAFT剤から液晶高分子を合成する条件を検討した結果、良好に重合が進行する膜厚や化合物の混合条件、光照射条件等を見出すことができた。光触媒としてイリジウム錯体をもちいることで、酸素の存在でもラジカル重合が阻害されることなく重合が進行することで、実験操作を空気中で行うことができ実験環境を簡素化できることも好都合な要因であった。これらの成果をもって初年度としては順調な進捗であると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
翌年度以降は、本来の研究の目的である、自由界面にて重合させながらそのメソゲンの光配向を実現する方向で研究を進める予定である。そのために、まずアゾベンゼンを有するRAFT剤の合成から進める。 一方、独自に開発した斜入射X線での観測装置で、アゾベンゼン高分子とシアノビフェニル系ネマチック液晶の界面での高度なハイブリッド構造形成をその場観測することに成功したので、この新たな界面現象の知見の蓄積に向けた検討も同時に進めていく予定である。
|