研究課題/領域番号 |
21H01988
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
井原 栄治 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (90243592)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ジアゾ酢酸エステル / C1重合 / リビング重合 / 立体特異性重合 / パラジウム錯体 / 機能性高分子 |
研究実績の概要 |
【リビング重合の実現とポリマー末端構造の精密制御】 各種のマレイミドを配位子とする新しいPd錯体を合成し、それらを用いたジアゾ酢酸エステルの重合開始剤系の開発に成功した。この開始剤系を用いると、得られるポリマーの開始末端に定量的にマレイミド由来の官能基の導入が可能となった。また、各種の官能基を有するボラートとPd錯体を組み合わせた開始剤系によるポリマーの開始末端へのボラート由来の官能基の導入にも成功した。 【ポリ(置換メチレン)のtacticityをNMRにより解析する手法の開発】 フルオレンをエステル部の置換基とするモノマーのオリゴマー化と、重合度分別、ジアステレオ分別に成功した。得られた構造の明確なオリゴマーは、立体構造の違いによって、フルオレン間の空間配置が異なることが予想されるが、実際にその影響によりエキシマー発光に関する光物性が異なることを観測した。 【立体特異性重合の実現】 各種のジアミンを配位子とするPd錯体を用いた新たな開始剤系が、シンジオタクチックに富む立体構造を有するポリマーを与えることを見出した。 【塩基性条件下での高分子反応および主鎖の分解反応】 エステル部にメトキシエチル基を有するジアゾ酢酸エステルの繰り返しユニットを、高度にケテンシリルアセタール骨格へと変換することに成功した。 【新たな官能基の導入による官能基集積型機能性高分子の合成】 新たな官能基として、各種の糖を始めとするキラルユニット、尿素結合、エステル型デンドロン等をエステル部に有するジアゾ酢酸エステルの合成とその重合に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ジアゾ酢酸エステル重合のC1重合を制御して、構造の明確なポリ(置換メチレン)を合成することがこの研究の目的である。そのためには、得られるポリマーの分子量、分子量分布、立体構造、末端官能基等を制御する必要があるが、それらの精密な制御を目的とする研究成果をある程度達成することができている。
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今後の研究の推進方策 |
【リビング重合の実現とポリマー末端構造の精密制御】 昨年度に開発に成功した各種のマレイミドを配位子とするPd錯体を用いたジアゾ酢酸エステルの重合開始剤系を用いて、様々な官能基の導入や分子量制御の実現を目指した検討を行う。同様に、各種の官能基を有するボラートとPd錯体を組み合わせた開始剤系を用いて、開始末端への様々な官能基の導入と、得られるポリマーの分子量制御の可能性を検討する。 【ポリ(置換メチレン)のtacticityをNMRにより解析する手法の開発】 昨年度にオリゴマー化と、重合度分別、ジアステレオ分別に成功したフルオレンをエステル部の置換基とする構造の明確なオリゴマーの結晶化を試み、成功すれば、そのNMRと立体構造の関係を詳細に解析し、ポリマーのtacticityの分析手法確立を検討する。 【立体特異性重合の実現】 昨年度に開発に成功した各種のジアミンを配位子とするPd錯体を用いた新たな開始剤系を元にして、さらに高度な立体制御を可能とする開始剤系の開発を検討する。 【基性条件下での高分子反応および主鎖の分解反応】 昨年度に合成に成功した、エステル部にメトキシエチル基を有するジアゾ酢酸エステルの繰り返しユニットを高度にケテンシリルアセタール骨格へと変換したポリマーの、ケテンシリルアセタール骨格への求核剤の反応による主鎖の高効率な4級化を試みる。 【新たな官能基の導入による官能基集積型機能性高分子の合成】 キラルユニット、尿素結合、エステル型デンドロン等をエステル部に有するジアゾ酢酸エステルの重合により得られるポリ(置換メチレン)の物性や機能発現について調査する。
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