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2022 年度 実績報告書

混合伝導性高分子材料の構造物性相関:電気化学トランジスタ特性の分子論的理解

研究課題

研究課題/領域番号 21H01992
研究機関東北大学

研究代表者

山本 俊介  東北大学, 工学研究科, 助教 (70707257)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード混合伝導性高分子 / 電気化学トランジスタ / 共役高分子
研究実績の概要

本年度は特にOECTの活性層に機能性高分子を混合することで新たな機能の付与を実現する方法について、構造・物性両面から検討を行った。今回は例として、温度応答性高分子PNIPAMを混合した系に注目し、温度変化によって起こる体積変化とそれによる膜の破壊への対応を検討した。このため、架橋剤として柔軟性の高いPEGDEを用いて温度応答性高分子と共役高分子の混合膜を活性層上に成膜し、その構造および素子特性について検討を行った。
GIWAXS測定を行った結果、neat膜と比較して混合膜では結晶化したPEDOTのπ-πスタッキングに対応したピークの散乱強度が減少しており、結晶性の低下が確認された。また、混合架橋剤を用いるとPEDOTの結晶性が増加することが分かった。次にブレンド膜の深さ分解XPS測定を行った結果、表面にPNIPAMが偏析した構造であることが分かった。続いて、OECT測定を行った結果、OECTの活性層にPNIPAMを混合し、架橋剤として混合架橋剤を用いた場合も、ディプレッションモードで動作することを確認した。次に、導電率と電気容量を個別に評価した結果、PNIPAM添加でいずれも減少傾向を示した。これらを比較すると導電率の低下が大きく、最終的な素子特性には移動度減少が比較的大きなインパクトを与えると考えられる。最後に混合架橋剤を用いて作製した混合膜の温度依存性の確認を行った。温度サイクル測定後に混合膜表面を観察した結果、GOPS単独架橋膜では膜に亀裂が見られ、温度変化による体積変化に耐えられないことがわかった。一方でGOPS+PEGDE混合架橋剤を用いた場合にはこの亀裂は見られず、降温方向、昇温方向の両方で可逆的な温度応答が確認された。
以上より、混合架橋剤を用いることで可逆的な温度応答ができるOECTデバイスへの応用が可能であることが示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

上記の通り、機能性高分子の添加に伴う膜構造の評価や素子特性評価に関する基盤は整い、実サンプルの評価に供することができるようになった。本研究で目指している赤外MAIRS測定系についても整備が完了し、測定条件の決定を完了するなど順調に進んでいる。

今後の研究の推進方策

今年度は混合伝導体膜の分子配向を含む構造評価手法を検討する。赤外MAIRS測定系を用いた検討ではデータ解析手法の最適化に注力し、得られた測定データから分子配向、集合構造に関する詳細な結果を得るための検討を進める。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)

  • [国際共同研究] ケンブリッジ大学(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      ケンブリッジ大学
  • [雑誌論文] Wettability Patternable Hybrid Polymer Films Based on TiO2 and Fluorinated Polymer for Bioelectronics Applications2022

    • 著者名/発表者名
      Yamamoto Shunsuke、Kai Hiroyuki
    • 雑誌名

      Advanced Materials Interfaces

      巻: 9 ページ: 2201736~2201736

    • DOI

      10.1002/admi.202201736

    • 査読あり
  • [学会発表] PEG系架橋剤を用いた有機電気化学トランジスタ素子の作製2023

    • 著者名/発表者名
      山本俊介、金田一修平、松原亮介、三ツ石方也
    • 学会等名
      第70回応用物理学会春季学術講演会
  • [学会発表] Controlling the Neuromorphic Behavior of Organic Electrochemical Transistors2022

    • 著者名/発表者名
      Shunsuke Yamamoto, George Malliaras
    • 学会等名
      2022 MRS Spring Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] Neuromorphic and Bioelectronics Applications of Polymer BasedOrganic Electrochemical Transistors2022

    • 著者名/発表者名
      Shunsuke Yamamoto
    • 学会等名
      The international conference on Flexible and Printed Electronics
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 親撥パターニング可能な高分子ハイブリッド膜の作製とデバイス応用2022

    • 著者名/発表者名
      山本俊介、甲斐洋行
    • 学会等名
      第83回応用物理学会秋季学術講演会
  • [学会発表] 電気化学トランジスタにおけるイオン拡散と素子特性 ~ハイドロゲル膜としての視点から~2022

    • 著者名/発表者名
      山本俊介
    • 学会等名
      第71回高分子討論会
  • [学会発表] 温度応答電気化学トランジスタの作製と素子特性2022

    • 著者名/発表者名
      金田一修平、山本俊介、三ツ石方也
    • 学会等名
      第71回高分子討論会
  • [学会発表] Polymer-Based Organic Electrochemical Transistors for Bioelectronic Applications2022

    • 著者名/発表者名
      山本俊介
    • 学会等名
      令和4年度化学系学協会東北大会
    • 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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