研究課題/領域番号 |
21H01996
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
芹澤 武 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (30284904)
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研究分担者 |
澤田 敏樹 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (20581078)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | セルロース / 酵素合成 / 自己集合 / 汎用性高分子材料 / 結晶性集合体 |
研究実績の概要 |
「セロオリゴ糖ならびにその片末端誘導体の酵素合成」を実施した。セロデキストリンホスホリラーゼを用いる酵素触媒重合により、化学修飾されていないセロオリゴ糖の合成のみならず、荷電基、親・疎水性基、反応性基などを還元末端側にもつグルコースを重合開始点(プライマー)とすることで、片末端に機能基をもつ様々なセロオリゴ糖を合成した。末端基の種類により状況は異なるものの、平均重合度が7から13程度の範囲で異なり、また重合度分布も異なるセロオリゴ糖の合成条件を明らかにした。また、多様なプライマーを用いた合成結果を整理することで、セロデキストリンホスホリラーゼが示す、プライマーに対する基質特異性を従来の知見に比べてより明確にした。さらに、合成したセロオリゴ糖あるいはその片末端誘導体を溶液pHの変化によりバルク水溶液中で自己集合させ、集合体の生成速度や形態などの基礎知見を収集した。次に、官能基の種類や親・疎水性などが異なるモデル固体表面上で様々なセロオリゴ糖あるいはその片末端誘導体を溶液pHの変化により自己集合化させることで複合化を検討した。その結果、セロオリゴ糖の濃度、複合化温度、溶液中の有機溶媒含量などが複合化の速度や量、複合化した集合体の形態や結晶構造、複合化の均一性(複合化した集合体の分布)などに影響することを明らかにした。これらにより、固体表面に対するセロオリゴ糖集合体の複合化に関する基礎知見を系統的に獲得し、望みの量、形態、結晶形、特性をもつセロオリゴ糖集合体を効率よく、安定かつ均一に複合化するための制御因子を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
荷電基、親・疎水性基、反応性基などを還元末端側にもつグルコースを重合開始点(プライマー)として、片末端に機能基をもつ様々なセロオリゴ糖の合成に成功するとともに、平均重合度や重合度分布が異なるセロオリゴ糖の合成条件を明らかにできた。また、酵素として利用しているセロデキストリンホスホリラーゼが示す、プライマーに対する基質特異性をより明確にできた。さらに、合成したセロオリゴ糖あるいはその片末端誘導体を水溶液中で自己集合させた際の集合体の生成速度や形態などの基礎特性を明らかにできた。これらに加えて、官能基の種類や親・疎水性などが異なる固体表面に対するセロオリゴ糖集合体の複合化に関する基礎知見を獲得できた。以上より、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平坦な固体基板表面に対するセロオリゴ糖集合体の複合化について検討したところ、基板表面に対して複合化した集合体は見た目にも不均一であることが多かった。これは、バルク水溶液中で生成したセロオリゴ糖集合体が凝集・沈殿し基板表面に付着していることによるものと考えられる。よって、不均一核生成による析出が主体となるように、比表面積が大きい多孔質材料への複合化を早々に検討することとする。これにより、固体表面への複合化に関する知見が獲得しやすくなるとともに、材料応用を見据えた複合化を当初予定よりも早い段階から検討できる意義がある。
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