研究課題/領域番号 |
21H02000
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
大野 工司 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (00335217)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 高分子合成 / 高分子構造・物性 / ナノ材料 / 表面・界面物性 / 自己組織化 |
研究実績の概要 |
本研究は、我々が独自に開発したポリマーブラシ付与複合微粒子の合成技術を駆使して、単純立方格子型コロイド結晶構築法を開発することである。本年度は、先ず、表面開始リビングラジカル重合によりローダミンおよびNBDにより蛍光標識したシリカ微粒子表面にカチオンおよびアニオンに帯電したポリマーブラシをグラフトすることにより複合微粒子を調製した。この際、グラフトポリマー鎖の分子量、モノマー組成を変えることにより、複合微粒子の構造パラメータを制御した。熱重量分析により高密度グラフト化を確認し、光散乱法および各種顕微鏡により複合微粒子の高い分散性を確認した。また、今年度から荷電ポリマーブラシを異方性粒子にグラフトすることに取り組み、各種のナノシートを表面修飾することに成功した。前年度に荷電ポリマーブラシ付与複合微粒子が、極めて大きな粒子間距離を有するコロイド結晶を形成することを明らかにした。この現象をさらに詳細に検討した結果、コロイド結晶化は、溶媒の誘電率、溶媒の塩濃度、粒子表面の電荷密度に大きく依存することを明らかにした。さらに、誘電率が10程度の極度に脱塩した溶媒中においては、10ミクロン程度の粒子間距離を有するコロイド結晶を作成できることが分かった。カチオンおよびアニオンに帯電した2種類の微粒子を混合することにより、二成分系コロイド結晶を構築する技術をほぼ確立することができた。この結晶化は、溶媒の塩濃度および誘電率に大きく影響されることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度にカチオンおよびアニオンに帯電したポリマーブラシ付与シリカ微粒子が極めて広い粒子間距離を示すコロイド結晶を構築することを明らかにした。この要因について検討した結果、分散溶媒の特性が重要な因子であることを見出し、これらについて学術論文で報告できたことは意義深い。異符号の電荷を有するポリマーブラシ付与シリカ微粒子から成る二成分系コロイド結晶においては、溶媒のクオリティーが結晶形成に極めて敏感に影響を及ぼすことを見出したことは、今後のポリマーブラシの設計に活かすことができる。また、二成分系コロイド結晶において当初目的とした単純立方格子型の結晶形成が一部確認できており、来年度以降に詳細に検討するための手がかりを既に得ている。また、異方性粒子の荷電ポリマーブラシを介した高次構造形成について検討するための下準備ができたことは、来年度以降に新たな展開を期待でき非常に意義深いと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね順調に進行しており研究計画の大幅な変更は必要ないと考えている。カチオンとアニオンの相互作用を用いて二成分系コロイド結晶を構築するという当初の計画は順調に達成できている。さらに、研究を進め単純立方格子型コロイド結晶構築法が確立することを目指す。一方で、静電的な相互作用を用いて二成分系コロイド結晶を作製するための条件が非常に限定させることも分かってきた。これを打破するためには、静電相互作用以外の相補的な系を用いることが賢明であり、具体的に、水素結合を使った実験系を組み立てつつあるところである。来年度以降に核酸塩基、カルボン酸/3級アミン系などを使った相補的な相互作用を用いることにより、コロイド結晶の設計の幅を拡げていくことを計画している。また、荷電ポリマーブラシ付与シリカ微粒子が低極性溶媒中において極めて広い粒子間距離を有するコロイド結晶を形成することを見出しており、これをナノシートなどの異方性粒子の展開することで新しいコロイド液晶構築法に繋がると期待しており、これについても検討を進めていく予定である。
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