研究課題/領域番号 |
21H02002
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
塩野 毅 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (10170846)
|
研究分担者 |
中山 祐正 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (20273576)
田中 亮 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (60640795)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ポリオレフィン / シクロオレフィンコポリマー / エラストマー / ブロックポリマー / ライブラリー |
研究実績の概要 |
錯体触媒によりリビング配位重合が可能となり,エチレン,プロピレン, 1-アルケン,ノルボルネンからなるさまざまなブロック共重合体が合成され,それらの優れた特性が明らかとなりつつある.しかし,リビング重合ではポリマー鎖と当量の触媒を必要とし,また,オレフィンと共役ジエンいずれにも有効なリビング重合触媒は存在しない.実施者は、これまでに適切な触媒を選択しエチレン,プロピレン,ノルボルネンとブタジエンの共重合を行うことでブタジエンが主鎖に1,4-挿入したポリオレフィンの合成に成功している.本研究では,これらのポリオレフィン同士,ならびにエラストマーとして重要なcis-1,4 ポリブタジエンやcis-1,4 ポリイソプレンとオレフィンメタセシスすることによりマルチブロックコポリマーを合成,物性を評価することで炭化水素系ポリマーライブラリーを構築し,それらの高分子材料の可能性を明らかにする. 2021年度はこのニッケル錯体触媒により少量のジエンを含むノルボルネン/ジエン共重合体(P(NB/Bd))を合成し,代表的なエラストマーであるcis-ポリブタジエン(PBd)とのクロスメタセシスにより,ポリノルボルネンをハードセグメント,ポリジエンをソフトセグメントとする新規マルチブロック共重合体の合成を検討した.メタセシス触媒(Grubbs第2世代)をcis-PBdと反応させた後にP(NB/Bd)を反応させることでブロック共重合体は合成しうるが,反応時間を長くするに従いcis-PBd連鎖部分がtrans-PBdに異性化するとともにバックバイティングにより環化するため,本手法によりポリブタジエンとポリオレフィンとのマルチブロック共重合体を合成することは困難であることが判明した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施者は,ノルボルネンの付加重合に高活性を示すニッケル錯体触媒を見いだし,同触媒をノルボルネンとブタジエンやイソプレンとの共重合に用いると,ジエンが高1,4-選択的にランダムに挿入した共重合体(Mn 15000~83000,ジエン含率 15~41 mol%,Tg 97~205 ℃)が得られることを明らかにしている. このニッケル錯体触媒により少量のジエンを含むノルボルネン/ジエン共重合体(P(NB/Bd))を合成し,代表的なエラストマーであるcis-ポリブタジエン(PBd)とのクロスメタセシスにより,ポリノルボルネンをハードセグメント,ポリジエンをソフトセグメントとする新規マルチブロック共重合体の合成を検討した.メタセシス触媒(Grubbs第2世代)をcis-PBdと反応させた後にP(NB/Bd)を反応させることでブロック共重合体は合成しうるが,反応時間を長くするに従いcis-PBd連鎖部分がtrans-PBdに異性化するとともにバックバイティングにより環化するため,本手法によりポリブタジエンとポリオレフィンとのマルチブロック共重合体を合成することは困難であることが判明した.
|
今後の研究の推進方策 |
エラストマー成分としてcis-1,4 ポリイソプレン(PIp)を用いてノルボルネン/ジエン共重合体(P(NB/Bd))とのクロスメタセシスを行い,ポリジエン部分の構造がクロスメタセシス反応に及ぼす影響について調査する.また,エラストマー連鎖部分のバックバイティングによる環化を防ぐために,cis-1,4 PIpの部分水素化物(主鎖に部分的に炭素-炭素二重結合を有するエチレン/プロピレン交互共重合体と等価)を用いてP(NB/Bd)とクロスメタセシス反応を行うことでマルチブロック共重合体の合成を目指す.さらに,部分水素化cis-1,4 PIpの代替物として,エチレン/プロピレン/ブタジエン三元共重合により主鎖に炭素-炭素二重結合を有するエチレン/プロピレン共重合体を直接合成する手法についても検討する.
|