研究課題/領域番号 |
21H02007
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
敷中 一洋 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (00507189)
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研究分担者 |
平良 尚悟 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 学振特別研究員 (00965072)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | バイオマスプラスチック / 植物高分子 / リグニン / 機能性高分子 |
研究実績の概要 |
持続可能な社会の実現に向けた脱炭素社会の実現は世界的に喫緊の課題である。バイオマス資源は燃料や工業原材料となり得るためその利用は本課題の解決に資する。その中でも植物バイオマスの主成分である多糖類・リグニンはバイオマスプラスチックとしての応用が期待されている。本研究ではリグニン利活用を妨げる「着色」を解決する応募者が独自に見出した「リグニンを白色化する」化学反応のメカニズムを解明する。更に白色化リグニンの機能評価をおこない機能性バイオマスプラスチックとしての用途を検討する。加えて白色リグニン合成反応を基とした植物などのリグニン含有組成物からの白色リグニンの単離を試み、新たなリグニン抽出・利用技術の創製につなげる。 研究代表者がこれまで見出したリグニン白色化技術を元に、当該研究はリグニン誘導体の白色化反応のメカニズム解明・白色リグニン合成工程の高効率化およびリグニン抽出技術への拡張をおこなう。加えて白色リグニンの各種機能を評価し、そのキラーアプリケーションを解明する。 当該年度は第一にリグニンに対し炭素数の異なるアルキルイソシアナートの修飾をおこないリグニン白色化における官能基構造の影響を系統的に評価した。ここにおいてはメタノール分解によるイソシアネート成分のカルバミン酸メチルとしての修飾物抽出・定量をおこない白色リグニン内におけるリグニン重量比の定量も実施した。第二に白色リグニンを例としたリグニン誘導体のキラーアプリケーション検討を目指し、有機高分子・黒鉛などとの複合化をおこないリグニン誘導体との親和性および複合物の熱的特性や電気化学的特性を評価、機能性芳香族高分子としての用途可能性を検討した。第三にリグニン含有組成物からの白色リグニン組成物の合成 + 抽出を達成した。 得られた研究成果について論文投稿・学会発表をおこない高分子学会およびトーキン科学技術振興財団より贈賞いただいた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に計画した「アルキルイソシアネートにおける炭素数などの構造とリグニンの白色度およびリグニン重量比相関検討」「白色リグニンを例としたリグニン誘導体の機能性芳香族高分子としての用途可能性検討」「リグニン含有組成物を原料とした白色リグニンの合成」について実施し、その実験結果から「リグニン白色化における置換基嵩高さと白色度・リグニン重量比の相関解明」「リグニン誘導体のグラファイト分散剤および導電膜・導電フィラーとしての機能解明」「スギおがくずからの白色リグニン組成物の合成 + 抽出」を達成できたため、研究は順調に進展していると考える。 また次年度に予定している白色リグニン合成高効率化および白色リグニンの機能性芳香族高分子としての用途可能性提案の端緒となる実験結果も確認されているため来年度も継続して研究を実施する。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は第一に白色リグニン合成反応の効率向上に向けた反応系最適化に取り組む。具体的には水/エタノール混合溶媒系で実施している合成反応を副反応が防げる有機溶媒系で検討する。またイソシアネート原料の仕込み量をリグニン白色化に用いるイソシアネートの構造最適化から検討する。 第二に白色リグニンの各種機能を評価し、素材としてのキラーアプリケーションを見出す。得られた結果から機能性芳香族高分子としての用途可能性を検討する。具体的にはモノイソシアナートで実施してきたリグニン白色化をジイソシアネートで検討し、得られるリグニン誘導体の白色度・熱的特性などを検討する。電気化学特性など新たな側面化からの機能評価を合わせて実施する。 第三にリグニン含有組成物を原料とした白色リグニンの合成に引き続き取り組む。具体的には木材酵素糖化粉砕物残渣などのリグニン含有組成物からの白色リグニンの合成 + 抽出が可能かを検討する。
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