研究課題/領域番号 |
21H02009
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
東原 知哉 山形大学, 大学院有機材料システム研究科, 教授 (50504528)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ブロック共重合体 / 半導体高分子 / シーケンス制御 |
研究実績の概要 |
本申請課題では、高分子合成化学を駆使したブロック共重合体のシーケンス制御技術を軸足とし、それらの自己組織化を利用することで、一般に二律背反する「半導体特性」と「伸縮性(弾性)」を解消するために必要十分なブロックシーケンスの基準を明らかにし、高効率かつ伸縮応力に耐えうる新規有機薄膜トランジスタ材料群を創出することを目的とした。 本年度は、研究実施計画に基づき、シーケンス制御トリブロック共重合体の合成法確立を目標とし、種々のポリマー合成を行った。実際に、熊田触媒移動型縮合重合法、リビングアニオン重合法、及びクリック反応を組み合わせることで、p型半導体高分子のポリ(3-ヘキシルチオフェン) (P3HT)、高ガラス転移温度(Tg)のポリスチレン(PS)、及び低Tgのポリイソプレン(PI)からなるシーケンスが制御されたABC 型トリブロック共重合体(P3HT-b-PS-b-PI)の合成に成功した。具体的には、鎖末端アジド基化P3HT (P3HT-N3)と鎖末端エチニル基化PI-b-PS (PI-b-PS-Alkyne)の銅触媒下アジド-アルキン環化付加 (CuAAC)に基づくクリック反応により目的のブロック共重合体を合成した。クリック反応後には副反応物や未反応の原料の残存が見られたが、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて分取することにより、分子量分布の狭い構造の明確なP3HT-b-PS-b-PIを得た(Mn = 27,000, Mw/Mn = 1.04)。以上、シーケンシャルABC型トリブロック共重合体の精密合成法の確立に至った。なお、一部モノマー配列をあえて一部ランダム化することで、新規A-b-(B-r-C)型シーケンシャルブロック共重合体への新展開にも成功した。これらの手法により、多様なシーケンシャルブロック共重合体の系統合成が可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請課題では、高分子合成化学を駆使したブロック共重合体のシーケンス制御技術を軸足とし、それらの自己組織化を利用することで、一般に二律背反する「半導体特性」と「伸縮性(弾性)」を解消するために必要十分なブロックシーケンスの基準を明らかにし、高効率かつ伸縮応力に耐えうる新規有機薄膜トランジスタ材料群を創出することを目的としている。初年度計画の通り、シーケンス制御トリブロック共重合体の合成法確立に成功しており、おおむね順調に研究が進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
高伸縮化・高効率化を目指したシーケンス設計指針の確立を行うため、一連のシーケンスを持つ半導体ブロック共重合体サンプルを合成し、それら薄膜の熱・光特性と集合体構造の評価を行うことで、ポリマーの一次構造と薄膜中の集合体構造との相関を明らかにする。さらに集合体構造と力学特性・電子特性との相関を明らかにすることで、伸縮性有機薄膜トランジスタの高伸縮化・高効率化に資するシーケンスの設計指針を確立する。
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