研究課題/領域番号 |
21H02012
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
玉井 康成 京都大学, 工学研究科, 助教 (30794268)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 電荷分離 / 電荷移動 / 電荷解離 / 有機薄膜太陽電池 / 過渡吸収分光 |
研究実績の概要 |
有機薄膜太陽電池の現在のstate-of-the-art系であるドナーにPM6、アクセプターにY6を用いたPM6/Y6素子は励起状態とCT状態のエネルギーオフセットが0.1 eV程度しかないにも関わらず効率よく電荷生成することが知られている。そこでPM6/Y6ブレンド薄膜について過渡吸収分光測定を行い、電荷生成メカニズムを検討した。 過渡吸収データに含まれる微弱な過渡電場吸収信号の時間発展を詳細に解析した結果、この系ではCT状態が自由電荷に解離するのに10 ps程度の時間を要していることがわかった。また電荷解離効率は温度に依存しないことから、既存のOnsagerモデル、Ballistic電荷分離モデルのどちらとも異なる機構で電荷分離していることがわかった。基底状態褪色信号のピーク位置の時間発展からこの系では材料が結晶化することで界面近傍にポテンシャルエネルギー勾配が形成され、この勾配を電荷がダウンヒル緩和することで電荷解離していることがわかった。 また、PM6およびY6の誘導体を用いて種々のPMn/Yn素子を作製し、光電変換特性を評価した。その結果、わずかに分子構造を変えることで光電変換特性が大きく変化した。特に電荷移動効率・電荷解離効率および無輻射再結合損失に顕著な変化が観測されたため、これらの起源について検討するため種々の分光測定を行なった。現在は過渡吸収データの解析を進めている最中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過渡吸収分光を用いた電荷分離ダイナミクスの解明についてはやや計画を上回るペースで進行している。一方、再結合発光の観測については、コロナ禍の影響により機器の納入遅れが生じ、予定していた計画を完了することができなかった。本年度にこの遅れを取り戻したいと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
モデル系として引き続きPM6/Y6およびその誘導体を用いたPMn/Yn系を用いて分光測定を行う。種々のPMn/Ynブレンド膜について過渡吸収測定を行い、電荷分離・対再結合ダイナミクスを検討する。 二分子再結合ダイナミクスについては過渡吸収分光法では追跡できないため、iCCDを用いた再結合発光観測を行う。昨年度iCCDのセットアップを完了することができなかったため、本年度も引き続きセットアップを進めるとともに、再結合発光の観測を進める。
|