研究課題/領域番号 |
21H02018
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
西出 宏之 早稲田大学, 理工学術院, 名誉教授 (90120930)
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研究分担者 |
須賀 健雄 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (10409659)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 有機機能材料 / レドックス反応 / ホール輸送高分子 / 光触媒 / 水分解 |
研究実績の概要 |
ポリチオフェンなどホール輸送性共役高分子の薄層が、固有な光吸収能と電荷輸送能の他に、水分子の酸化還元および水中酸素分子の還元反応の触媒能を兼ね備え、さらにいくつかは光照射下でも促進され、水分解(水素・酸素ガス発生)と過酸化水素生成に作動することを実証している。 (1)一連のポリ(3-アルキルチオフェン)およびアンモニウム塩ドープ体の薄層につき、結晶・非晶構造、ホール輸送性、HOMO/LUMO電子状態を明らかにするとともに、特にドープしたポリ(3-ヘキシルチオフェン)薄層が、低い過電圧でサブmA/cm2 還元電流を与え、水中酸素の還元による過酸化水素の生成効率96%と高かった。同層は可視光吸収も強く、光照射下では還元開始電圧が平衡電位を超え、速度4g(H2O2)/gポリマー・hrで過酸化水素を生成した。共役高分子による光吸収/電荷分離・輸送、電子注入、還元反応による過酸化水素生成の機構を明らかにした。 (2)高分子薄層に接する水分子の状態(水素結合、クラスター形成、イオン解離度)をNMRで解析した基礎知見を報告し、水レドックスに及ぼす影響について示唆した。 (3)ポリトリフェニルアミン薄層に正電位を印加して水分子の酸化を試みたところ、アミン自身の酸化など副反応が併発した。2電子還元による水素、過酸化水素の生成に対比して、水分子の4電子酸化による酸素発生は難度高く、有機・高分子による既報は極めて限られている。まず問題点と設定すべき実験条件を整え、令4年度に繋げた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りに進捗している。論文2報(謝辞付き)印刷発表、また令4年度に国際会議での招待講演など本課題の成果が認知され始めている。
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今後の研究の推進方策 |
令4年度は次の(1)、(2)を実施するとともに、全体目的である(3)ホール輸送高分子の水レドックス能の議論を俯瞰的に深める。 (1) ポリチオフェン誘導体として水反応界面までのホール導電が担保できるPEDOTなどを対象として、ホール形成の対イオン、また親水性高分子を担持足場ともする薄層陽極を作成する。幅広いpH水、暗所での電気化学的な水酸化実験より、反応(酸素発生)開始電圧、過電圧、電流値、Tafel勾配、Faraday効率を計測する。高分子薄層の各種分析と合わせ、触媒活性点、電荷輸送ネットワーク、反応生成物の移動経路、親水多孔表面などを明らかにする。 (2) HOMO準位深い共役高分子としてポリアリールチオフェン、ポリフルオレン、ポリカルバゾールなどに対象を広げ、それら薄層電極による水酸化・酸素発生触媒能を、光照射下での活性も合わせ検討する。一連の共役高分子薄層の水レドックス活性パラメータを、共役構造の電子状態、薄層構造、化学的耐久性などと関連付けて整理する。 (3) 共役レドックス高分子の酸化還元電位、双安定性、電荷分離、また水界面での電子授受につき、既報論文も精査しながら普遍的に議論し、資源・毒性・安全性に制約ある金属触媒に対して、フィルム形成や耐久性などとあわせ、有機高分子の利点と可能性を描像する。
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