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2021 年度 実績報告書

光誘起電荷分離効率化による高効率有機蓄光システムの実現

研究課題

研究課題/領域番号 21H02020
研究機関沖縄科学技術大学院大学

研究代表者

嘉部 量太  沖縄科学技術大学院大学, 有機光エレクトロニクスユニット, 准教授 (00726490)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード有機蓄光 / 電荷分離 / 電荷蓄積 / 有機半導体 / 有機エレクトロニクス
研究実績の概要

蓄光材料は吸収した光エネルギーを電荷として蓄え、徐々に再結合することによって長時間の発光を可能とする。無機結晶にドーパントを加えた既存の無機蓄光材料に対して、我々が開発した有機蓄光材料はアモルファス状態で機能し、溶解性・柔軟性といった無機材料とは異なる機能を有する。一方で、無機材料に比べてキャリア間のクーロン相互作用が大きい有機材料では電荷分離効率が悪く、蓄光発光も向きに比べて弱い。
本年度は、有機蓄光システムにおける電荷分離状態のクーロン相互作用低減のために、イオン性材料について検討した。電気的に中性の分子を利用した場合、電荷分離状態は電子ドナー材料の1電子酸化状態(ラジカルカチオン)と電子アクセプター材料の1電子還元状態(ラジカルアニオン)となる。一方、カチオン性アクセプターを用いた場合、1電子還元状態は中性ラジカルとなるため、キャリア間のクーロン相互作用が低減し、再結合過程の抑制が期待される。
実際に、フォトレドックス触媒としてよく知られるカチオン製分子TPPと、中性の有機半導体分子TPBiを用いて有機蓄光システムを構築した結果、良好な蓄光特性が得られた。また、このシステムではこれまでの電子が拡散する有機蓄光ではなく、ホールが拡散していると考えられる。一般的には有機材料のラジカルカチオンの方がラジカルアニオンに比べて反応性が低く、電荷分離状態の安定化に寄与してると考えられる。さらに電荷トラップ材料を添加することで、より効率的な蓄光発光を得ることに成功した。この電荷分離状態は酸素との反応が抑制されるため、大気下でも機能することが確認された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1つ目の大きな目標である、電荷分離状態の安定化について、イオン性材料が利用できることを実証した。また、これまでの電子拡散機構ではなく、ホール拡散機構を利用することで、酸素の酸化還元電位より低い準位で電子移動が生じ、酸素との反応を低減することに成功した。イオン性材料の利用は、一般的な有機半導体材料だけではなく、様々な有機分子を利用できることを見出した。

今後の研究の推進方策

これまでに、イオン性材料としてカチオン性アクセプターを利用した有機蓄光システムを開発した。電荷分離の安定化に有利であることが予想されるため、今後は材料のHOMO、LUMO準位最適化についてより効率的な蓄光システムを開発するとともに、アニオン性ドナーについても検討を進める。また、膜中での電子ドナーとアクセプターの相関は重要であるため、凝集状態の制御についても検討を進める。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件)

  • [雑誌論文] Organic long-persistent luminescence stimulated by visible light in p-type systems based on organic photoredox catalyst dopants2021

    • 著者名/発表者名
      Jinnai Kazuya、Kabe Ryota、Lin Zesen、Adachi Chihaya
    • 雑誌名

      Nature Materials

      巻: 21 ページ: 338~344

    • DOI

      10.1038/s41563-021-01150-9

    • 査読あり
  • [学会発表] 電荷分離状態を利用した光機能材料2021

    • 著者名/発表者名
      嘉部量太
    • 学会等名
      第23回“光”機到来!Qコロキウム
    • 招待講演
  • [学会発表] Persistent luminescence from stable charge-separated states2021

    • 著者名/発表者名
      Ryota Kabe
    • 学会等名
      The 6th International TADF Workshop
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 安定電荷分離状態を利用した光機能材料2021

    • 著者名/発表者名
      嘉部量太
    • 学会等名
      第97回高分子若手研究会(関西)
    • 招待講演
  • [学会発表] 有機材料を用いた輝尽発光システムの開発2021

    • 著者名/発表者名
      櫻井 学, 嘉部 量太, 婦木 正明, LIN Zesen, 陣内 和哉, 小堀 康博, 安達 千波矢, 立川 貴士
    • 学会等名
      2021年光化学討論会
  • [学会発表] 電荷分離を利用した有機蓄光材料2021

    • 著者名/発表者名
      嘉部量太
    • 学会等名
      強光子場科学研究懇談会 2020年度 第2回懇談会
    • 招待講演

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公開日: 2022-12-28  

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