蓄光材料は光エネルギーを電荷として蓄積し長時間の発光を示す。有機材料においても電子ドナーとアクセプター界面の電荷分離を利用することで蓄光発光を得ることが可能である。前年度までの研究でカチオン性アクセプターと中性ドナーを利用した有機蓄光システムを実現した。しかしながら、イオン性材料を中性有機半導体材料に添加するため相溶性が低く、相分離を生じやすい。また低分子材料では自立膜形成が困難であり実用化に際して課題となる。 そこで本年度は、カチオン性アクセプターユニットと中性ドナーユニットを有する共重合ポリマーを開発した。アクセプターユニットとドナーユニットの混合比を変えた共重合ポリマーを合成し、発光特性を評価した結果、アクセプター濃度が低い材料でよい蓄光特性が観測された。このポリマーは追加の材料添加などを必要とせずに蓄光を得ることが可能である。また、熱による相分離が生じないため、熱ルミネッセンス測定によりトラップ深さを解析した結果、0.3 eV程度までの浅いトラップが電荷を保持していることが確認された。さらなる高性能化のためにホールトラップ材料を添加した結果、蓄光特性は向上し、近赤外発光材料を添加することで900 nmを超える有機蓄光を実現した。これらのシステムは大気下でも機能し、バイオイメージングへの応用が期待される。 電子ドナーとアクセプターのエネルギーギャップについても検討をすすめ、エネルギーギャップが小さい系でも電荷分離が生じることを確認した。この場合、分子間電荷移動励起状態と局所励起状態の混合が生じ、局所励起状態からの蓄光が得られることを見出した。
|