研究課題/領域番号 |
21H02025
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
中田 一弥 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70514115)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ダイヤモンド / 光触媒 / 不活性分子の還元 |
研究実績の概要 |
負の電子親和力を示すホウ素ドープダイヤモンド(BDD)は、光吸収によって高エネルギー電子を放出することが知られている。本研究では、溶液中においてBDDに光照射をした際に放出される高エネルギー電子に関する学理を構築するとともに、高エネルギー電子の強力な還元力を利用した新反応開拓と有用物質生成を行うことを目的とする。具体的には、BDDから生成した高エネルギー電子が引き起こす還元反応のメカニズム解明を行うとともに、常温・常圧で有用物質を高効率・高選択的に生成することを最終目標とする。本研究によって、様々な反応基質を極めて穏やかな条件下で有用物質へと変換する新しい反応系の確立が期待できる。2022年度は窒素還元による生成物として、アンモニア以外の化合物が生成しているかを確認するために、液体クロマトグラフの修理を行い、生成物の同定を検討した。また窒素還元の際のガス流量を精密にコントロールするためにマスフローコントローラーを導入した。このことにより、窒素還元反応の再現性が著しく向上した。一方、ダイヤモンド粒子の水素終端化、酸素終端化をそれぞれ行うために、管状電気炉を購入した。水素ガス気流中または酸素ガス気流中にて高温でダイヤモンド粒子を処理することにより、水素終端化および酸素終端化できることを明らかにした。また、ダイヤモンド粒子の電子構造を評価するために、当研究室に設置しているポテンショスタットをバージョンアップするための解析ソフトの購入を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度はダイヤモンドの構造因子や溶液系が化学反応にどのように影響を与えるかについて検討した。ダイヤモンド表面の終端分子には、水素終端、酸素終端およびアミノ基終端のものを用いた。水素終端のダイヤモンド表面はC-H結合からなり、H原子に部分電荷(δ+)が存在するため電子の放出を安定化させると推測される。またアミノ基終端についても同様のことが推測される。一方、酸素終端は部分電荷(δ-)によって電子の放出が妨げられる可能性がある。実際に、窒素ガスをバブリングした水中にて、ダイヤモンド粒子に光照射を行うと、アンモニアが生成することは前年度の検討により確認されていたが、ダイヤモンドの終端分子を水素からアミノ基へと変更すると、アンモニアの生成量が増加した。一方、水素終端から酸素終端へと変更すると、アンモニアの生成が減少した。これは、終端分子が電子の放出へ影響を与えていることを示唆する。また犠牲試薬を添加した際、アンモニアの生成量が増加した。一方、系中には硝酸イオンや亜硝酸イオンの存在も確認された。これは、窒素の還元によって生成したアンモニアがBDDによって酸化され、硝酸イオンや亜硝酸イオンになったと推測される。以上の結果から、ダイヤモンドの構造因子や溶液系が窒素還元反応に影響を与えることを明らかにすることができ順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまでに得られた知見を利用して、窒素だけではなくその他の難還元性物質の還元を試みる。また、その反応に影響を与える因子(構造因子や溶液系など)についても調査する。
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