本研究の主目的は強力な『刺激発光を示す希土類配位結晶』の設計指針を明らかにする材料学理の構築を行うことである。刺激発光を示す配位化合物の結晶粒子(数10μm)に対して、力学刺激による分光測定/解析を行い、その特異現象の光物理と刺激発光性を創出する物質設計の確立する材料化学の深化を行った。予定通り単粒子での刺激発光現象を捉えることができ、結晶粒1つからの可視発光観測(スペクトル+画像取得)と放射速度定数解析に必要な刺激蛍光寿命τ/sの測定を行うことができた。外気環境として例えば温度に対して、影響を受ける配位蛍光体材料の光機能の特徴を活かし、測定環境可変の光学ステージを用いて実験検討を開始したところ、放射速度定数の値は光励起による放射および非輻射の速度定数と大きく異なる値であることが見出せた。最終年度では特にその継続として測定システムの本格運用と多角的な見地から、ポリマー結晶や既知の単核錯体など含め多くの刺激発光体の合成、評価を進めた。その結果、温度等のパラメータの違いに対して、刺激発光励起と光発光励起の本質的な物理過程に違いがあることを見出すことができた。またりん光発光性の刺激発光体としてGdを用いた配位結晶の検討、同様の測定も行ったところ刺激発光の励起寿命時間の方が一様に長いことがわかり、この刺激発光の起源には有機配位子側の励起状態の寄与が大きく関わってることが明確に示された。今現在、刺激発光特性に対し、明確な材料設計指針と学理に基づいた材料化学で進展させていく研究例は少ないと考えており、本基盤研究により新たな価値が付与された新しい光機能材料開発が少しでも進み次ステップに繋がることを期待している。
|