研究課題/領域番号 |
21H02033
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
桑田 直明 国立研究開発法人物質・材料研究機構, エネルギー・環境材料研究拠点, 主幹研究員 (00396459)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | トレーサー拡散係数 / 正極材料 / 単結晶 / 固体電池 / 物理化学 / 電気化学 / イオニクス |
研究実績の概要 |
本研究では、二次イオン質量分析(SIMS)法を利用したリチウム拡散解析法を開発し、全固体電池解析に応用することを目的としている。特に、オペランドSIMS測定法を開発し、全固体電池の動作中のリチウムイオン移動経路の解明を目指す。 本年度は、オペランドTOF-SIMSのための専用特殊ホルダの開発を行った。室温で動作可能な電池のために、トップマウントホルダに4つのピンから電流導入端子に接続する特殊ホルダを作製した。さらに、温度可変に対応した6ピン型の特殊ホルダを開発した。 酸化物型全固体電池のバルク・界面におけるイオンダイナミクスを解明するため、正極材料として最もよく知られたコバルト酸リチウム(LiCoO2)を対象として、トレーサー拡散測定を行った。同位体分布の観測にはTOF-SIMS装置(ION-TOF,TOF-SIMS5)を使用した。 定比組成のLiCoO2は極めて低い拡散係数を示すことが分かっており、電気化学的にLiを脱離することで拡散係数を5桁以上増加させた。室温で6Li同位体交換を行ったLixCoO2単結晶を用いることで、6Li同位体の濃度比が空間的に変化している様子を捉えた。一次元拡散方程式を用いた解析からリチウムイオンのトレーサー拡散係数を見積もることができた。 また、粒界を含む材料として、高いリチウムイオン伝導性を持つLi0.29La0.57TiO3(LLTO)をモデル系としてトレーサー拡散係数測定を行った。粒界部分では、6Li同位体濃度が大きく変化していることが観察された。この結果を解析することにより、粒界拡散係数を求めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TOF-SIMS特殊ホルダの納品が少し遅れたものの、同位体トレーサーを用いた拡散測定は問題なく実施できたため、全体としては順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに開発したオペランドTOF-SIMS専用特殊ホルダを使用して、オペランド測定を実現する。対象として、室温で動作するモデル系の全固体電池系を利用する。断面はイオンミリングなどにより加工し、TOF-SIMSと電子顕微鏡観察を組み合わせることで、構造とイオン分布の関連付けを行う。
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