昨年度までに開発したオペランド二次イオン質量分析(SIMS)法を実用的な酸化物型固体電池の解析に応用した。ポテンショスタット及び電流導入端子により、定電流の条件でSIMS装置内での充放電を行い、イメージング測定を実施した。充電過程では、正極活物質の断面からLiが脱離する過程が7Liイメージング測定により観察された。Li強度は電解質に近い部分から減少し、充電が進行するにつれて正極活物質全体に広がっていくことが確認された。このことは充電過程において、正極活物質粒子内のLi濃度(充電状態)が不均一になることを示している。以上のことから、オペランドSIMSは固体電池のリチウム分布を実験的に可視化できる非常に有力な手法であることが実証された。
負極側でも同様に測定を行い、Li強度の増加を可視化した。充放電を繰り返すと、可逆的に強度変化が起こることが確認され、オペランドSIMSで充放電による活物質のLi濃度変化を捉えられることが示された。活物質内におけるリチウム拡散経路を解明することや、充放電への寄与率を決める手法としてに応用することが期待される。
また、固体電解質のバルク・界面におけるイオンダイナミクスを解明するため、高速イオン伝導体の多結晶におけるバルクと粒界のリチウム拡散係数を同位体トレーサー実験により解析した。この新手法および固体電解質の粒界拡散係数に関する論文は、J. Mater. Chem. A誌に掲載された。また、プレスリリースを行って成果を広く公開した。
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