研究課題/領域番号 |
21H02039
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山田 裕貴 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (30598488)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | リチウムイオン電池 / 電極電位 / 電解液 / 電気化学 |
研究実績の概要 |
本研究では、リチウムイオン電池の次世代電極(高電位正極・高容量負極)で問題となっている電解液の不要な酸化・還元分解を抑制する熱力学的新戦略を確立することを目的とする。具体的には、電極電位の自在制御が可能な電解液設計指針を確立するととも、電極電位に着目した電解液設計により上記次世代電極の電位を電解液の電位窓内に収めることで、電解液の酸化・還元分解を抑制する。 今年度は、さまざまなリチウム系有機電解液を調製し、電極電位の変位現象を系統的に調べた。その結果、電解液の種類によって0.5 V以上の電位変位が発生することが分かった。特に、(i)リチウム塩の濃度、(ii)塩の対アニオンの種類、(iii)溶媒のルイス塩基性(溶媒和エネルギー)に着目し、電極電位の傾向を観察すると、高濃度のリチウム塩の使用、弱配位性(低ルイス塩基性)の溶媒及び対アニオンの使用によって、電極電位は上昇する傾向にあることが分かった。この結果に基づき、電極電位の決定要因について理論的考察を行った。 本研究で見出された0.5 V以上の電極電位変位は極めて大きく、電解液設計によって自在に電極電位を制御可能であることが示された。従来の研究では、上記次世代電極の可逆充放電に向けて、不働態被膜の存在によって電解液の分解を速度論的に抑制する手法が採用され、可逆性(充放電効率)には一定の上限があった。それに対し、本研究の電解液設計戦略を応用することで、速度論的要素を排除することができ、従来の手法では到達不可能な充放電可逆性を達成できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年4月に異動し、その後研究室の立ち上げ、装置の移設等に時間を要したため、当初予定していた実験計画と比較すると遅れている。一方、実験ができない期間を利用し、当初は2022年度に予定していた理論的考察を大きく進めることができたことに加え、2022年4月時点で研究室立ち上げ作業はほぼ完了しているため、2022年度中にに当初の計画にまで研究を進めることが十分可能な状況である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に異動のため実験ができない期間があり、その期間を利用して2022年度に予定していた理論的考察を大きく進めることができた。2022年度は、当初2021年度に予定していた実験を早期に完了し、電極電位変位現象の機構解明を中心的に進めていく予定である。
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