研究実績の概要 |
本研究では酸化物アニオンのレドックスを用いた過剰なフッ化物イオンの挿入・脱離反応ならびにフッ化物イオンの拡散パスの制御により、超高容量・高出力のフッ化物イオン二次電池用正極を創成とその反応機構解明を行う。2021年度はCaxSr1-xFeO2(x = 0, 0.2, 0.4, 0.6, 0.8, 1.0)正極材料の合成とその電気化学特性評価、並びにフッ化物イオン挿入脱離前後のSrFeO2の結晶構造変化、電子構造変化の分析を行なった。SrFeO2は研究計画時に想定していた2個分のフッ化物イオン挿入時の容量(305 mAh g-1)よりも高い容量(350 mAhg-1)を示した。さらに検討した組成の中でCa0.8Sr0.2FeO2が最大の容量を示し、その値は500 mAhg-1を超える極めて高いものであった。CaxSr1-xFeO2(x = 0, 0.2, 0.4, 0.6, 0.8, 1.0)のいずれの組成においても305 mAhg-1よりも高い容量を示し、良好なサイクル特性を示した。フッ化物イオン挿入脱離後のSrFeO2に対して、放射光X線回折を行なったところ、初回充電後からはフッ化物イオンの挿入脱離に対して可逆的に結晶構造が変化しており、その体積膨張率が極めて小さいことが明らかとなった。また、O, F, Fe K-edgeのX線吸収分光測定の結果、充電初期にはFeが電荷補償を担い、充電後期にはOが電荷補償を担っていることが明らかとなった。さらにO K-edgeの共鳴非弾性 X 線散乱測定を行なったところ、Oが電荷補償担う際には分子状の酸素が形成していることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
CaxSr1-xFeO2(x = 0, 0.2, 0.4, 0.6, 0.8, 1.0)の中でCa0.8Sr0.2FeO2が最も高い容量を示す要因を明らかにするために、フッ化物イオン挿入脱離前後のCa0.8Sr0.2FeO2とCaFeO2に対して、SrFeO2と同様に放射光X線回折による結晶構造変化の解析、O, F, Fe K-edgeのXAS測定による電子構造変化の解析を行う。BaxSr1-xFeO2(x = 0, 0.2, 0.4, 0.6, 0.8, 1.0)の合成に取り掛かり、キャラクタリゼーション、電気化学特性評価を行う。
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