研究実績の概要 |
本研究では酸化物アニオンのレドックスを用いた過剰なフッ化物イオンの挿入・脱離反応ならびにフッ化物イオンの拡散パスの制御により、超高容量・高出力のフッ化物イオン二次電池用正極を創成とその反応機構解明を行う。2022年度はBaxSr1-xFeO2(x = 0, 0.1, 0.2, 0.3, 0.6, 0.8)正極材料の合成とその電気化学特性評価、並びに2021年度に検討したCaxSr1-xFeO2(x = 0, 0.2, 0.4, 0.6, 0.8, 1.0)の中で最も優れた電気化学特性を示したCa0.8Sr0.2FeO2のフッ化物イオン挿入脱離前後の電子構造変化の分析を行なった。検討したBaxSr1-xFeO2においてx=0.3まではBaの添加量が増加するのに伴い、レート特性が向上した。一方でx=0.3を超えたBa添加量では容量が急激に低下した。X線回折測定の結果、この急激な容量低下はx=0.3を超えてBa添加した際に起こる構造相転移が原因であることが明らかとなった。Ba添加による構造相転移が起こらないBaxSr1-xFeO2(x = 0, 0.1, 0.2, 0.3)では、いずれの組成の化合物も250 mAhg-1よりも高い容量を示し、良好なサイクル特性を示した。フッ化物イオン挿入脱離後のCa0.8Sr0.2FeO2に対して、O, F, Fe K-edgeのX線吸収分光測定の結果、充電初期にはFeが電荷補償を担い、充電後期にはOが電荷補償を担っていることが明らかとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
BaxSr1-xFeO2(x = 0, 0.1, 0.2, 0.3)の中でBa0.7Sr0.3FeO2が最も高いレート特性を示す要因を明らかにするために、BaxSr1-xFeO2(x = 0, 0.1, 0.2, 0.3)に対してBa, Sr, Fe K-edgeのXAS測定による局所構造分析を行う。またBa0.7Sr0.3FeO2に対してはフッ化物イオン挿入脱離時の電荷補償機構を明らかにするためにO, F, Fe K-edgeのXAS測定による電子構造変化の解析を行う。
|