研究実績の概要 |
光触媒作用による太陽光水分解は、化石燃料に頼らないクリーンな水素エネルギー製造法として注目を集めている。本研究では、従来、過酸化水素の生成には適していなかったヘマタイトの表面をSnとTiを含む複合酸化物で被覆することで、水素と過酸化水素が極めて高い効率と選択性で生成されることを見出した。 ソルボサーマル法によって、ヘマタイトナノ粒子が配向を揃えて三次元的に集積化したメソ結晶を合成した。異種金属元素をドーピングしたたメソ結晶も同条件で合成した。得られたメソ結晶を導電性ガラス上にスピンコート法によって成膜し、焼成することでメソ結晶光電極を得た。電子顕微鏡解析などから、焼結によって熱拡散したドーパントがヘマタイト表面に新たな酸化物被膜を形成することがわかった。 作製したヘマタイトメソ結晶光電極をアノードとし、光水分解特性を評価した。光電流密度を測定したところ、Snドープ体<無ドープ体<Tiドープ体<Sn,Tiドープ体の順に数値が大きくなった。光電流密度の大きさは水素の生成量に対応する。電気化学インピーダンス測定によるナイキストプロットから、メソ結晶内部(構成するナノ粒子同士の界面)、メソ結晶同士の界面、そしてメソ結晶と導電性ガラスの界面における抵抗値の低下が電流生成に寄与していることが示唆された。一方、メソ結晶表面で起こる酸化反応過程はドーパントの種類、つまり助触媒の役割を果たす酸化物被膜によって大きく異なることがわかった。特に、Sn,Tiドープヘマタイトメソ結晶光電極では、ファラデー効率がで90%を超え、ほぼ選択的に過酸化水素を生成していることがわかった。また、第一原理計算から酸化物被膜の局所構造を検討した。
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