光触媒作用による太陽光水分解は、化石燃料に頼らないクリーンな水素エネルギーや有用化成品の製造法として注目を集めている。本研究では、従来、過酸化水素の生成には適していなかったヘマタイトの表面をチタンとスズを含む複合酸化物で被覆することで、水素と過酸化水素を極めて高い効率と選択性で生成できることを見出してきた。当該年度は、ドーパントの種類および濃度がヘマタイト光電極の特性に及ぼす影響を定量化することを主たる目的とし、新規光電極の作製と光電気化学的評価を行った。合成条件のうち、ヘマタイト電極作製時の冷却過程とその後の低温アニールが、ヘマタイト光電極性能に大きく関与することがわかった。同じ触媒かつ同じ作製法で得られた電極にも関わらず、性能にばらつきがあるヘマタイト光電極について、低温アニール処理を行うことで性能の向上と均一化を達成できた。最適化された作製プロセスで得られた光電極の光触媒活性を予測するため、機械学習モデルの作成を行った。光触媒活性の定量は、光電極に疑似太陽光を照射し、リニアスウィープボルタンメトリーによって評価した。説明変数は、蛍光X線測定によって決定した組成式からXenonPyを用いて作成した元素特徴量を用いた。ランダムフォレスト回帰による触媒活性予測から、分散の値を用いることで決定係数の増加や、平均二乗事情誤差や平均絶対誤差の減少がみられた。これは、予測モデルの表現力が向上したためと考えられる。上記に加え、光触媒システムの性能および応用範囲を向上・拡大するため、異種材料との複合化や関連する光機能性材料の反応解析を行った。
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