研究課題/領域番号 |
21H02050
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
吉田 真明 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (00582206)
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研究分担者 |
酒多 喜久 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (40211263)
山方 啓 岡山大学, 自然科学学域, 教授 (60321915)
長坂 将成 分子科学研究所, 光分子科学研究領域, 助教 (90455212)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 光触媒 / 水分解 / 水素製造 / 酸素生成 / 赤外分光 / X線分光 / In-situ測定 |
研究実績の概要 |
水素製造を目的とした水分解光触媒は、太陽光により水を分解して水素を生成することができるため、クリーンなエネルギーシステムを構築できるものと期待されている。光触媒は太陽光を吸収すると、励起電子と励起ホールといった励起キャリアを生成し、励起電子が水素生成助触媒に移動して水素を、励起ホールが酸素生成助触媒に移動して酸素を生成する。しかし、その励起キャリアの移動に関しては十分な知見が得られていない。そこで本研究では、赤外光とX線を用いて光触媒内の励起キャリア移動を観測し、その反応過程を調べることを目指している。本研究を推進することで、光触媒反応の効率に影響を与えている因子を特定することができれば、より優れた光触媒材料を開発していけるものと考え、研究に注力している。 昨年度は赤外分光測定装置とX線分光測定装置の立ち上げや高度化を行い、概ね予定通り進めることができた。まず最初に、モデル光触媒単結晶板に対して赤外測定を行い、光触媒上に移動する励起キャリアを観測することに成功した。特に、ポテンショスタットで電極電位を印加した際は励起キャリア移動が促進され、光電極として利用すると優れた水分解活性を示すことが分かった。続いて、光触媒粉末に関する測定を行い、光触媒表面の電子状態に対応するようなスペクトルが得られ、in-situ赤外分光測定自体が問題がないことを確認した。また、放射光施設で触媒のX線分析を行い、電気化学的に酸素生成触媒の構造が変化する様子を観測することに成功し、その反応メカニズムを解明することができた。以上の結果を複数の論文として投稿しており、今後は更なる検証を行い、本研究の目的である「励起キャリア移動を促進する光触媒表面」を探索していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のように現在までの進捗状況は「おおむね順調に進展している」。これまで、励起キャリア移動を観測する測定装置の立ち上げや高度化を進め、モデル光触媒に関しては観測できるようになっているためである。しかし、まだ測定が不安定なこともあり、より高感度にスペクトルを観測できるよう、改良していく必要を感じている。また、モデル光触媒が観測できるようになったので、今後は様々な光触媒材料の観測を行い、その反応メカニズムの解明や優れた光触媒材料の提案を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね測定装置が立ち上がってきたので、今後は測定装置の更なる高度化と様々な光触媒材料の観測を進めていく計画である。具体的には、赤外光やX線の光軸調整を行い、サンプル面への入射から検出器までの取り込みに関して改良を加え、高分解能なスペクトルを得ていくことを考えている。また、光触媒粒子の観測を行えるようになったので、光触媒単結晶と比べることで、光触媒の形状が励起キャリア移動に与える影響を調べていきたい。また、様々な光触媒材料を比較・検討していくことで、水分解活性に影響を与えている因子を調べていくことを予定している。
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