研究実績の概要 |
可視光及び近赤外光を効率よく吸収する金ナノ構造配列体と電子アクセプター半導体である酸化チタンや遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)2次元材料を積層したプラズモン誘起電荷分離システムを作製し、フェムト秒過渡吸収分光法によるキャリアダイナミクスの詳細な解明研究を行うことが第1の目的である。さらに、水素発生助触媒への電子移動ダイナミクス、それに続く水素バブルダイナミクスの定量的評価を初めて実現することが第2の目的である。特に電子アクセプター層のナノ薄膜化によりこれまで量子効率が低いままであったエネルギー変換効率の飛躍的上昇を目指す。 該当年度は、新たに原子層体積法(北海道大学の共用設備を利用)で、金ナノ粒子配列体を配置したガラス基板上に膜厚範囲20~100 nmの異なる酸化チタン薄膜を作製した。金ナノ粒子配列体の吸収スペクトルは酸化チタン薄膜との誘電的相互作用により長波長にシフトし、可視域全体を吸収する光学応答を示した。プラズモン励起下で金ナノ粒子から酸化チタンに移動する電子の反応性を定量的に評価するため、活性酸素検知蛍光色素を用い、その吸収スペクトル強度の酸化チタン膜厚依存性を調べた。その結果、予想通り酸化チタンの膜厚が小さい時に最も反応性が高いことが確かめられた。フェムト秒過渡吸収分光法で伝導電子の生成・減衰過程を解析する計画であったが装置トラブルで実施出来なかった。 TMDC材料の硫化タングステンのナノシートを、液中レーザーアブレーション法により作製した。金ナノ粒子配列基板上にナノシート分散溶液を滴下することにより、可視光を強く吸収する複合膜を作製することが出来た。作製試料の形状および基礎物性の評価をSEM, TEM, EDS, AFM, 顕微ラマン法で用いて行い、ナノ構造の詳細に明らかにした。今後、ダイナミクスとの関係を明らかにする計画である。
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